未来捏造

□2-ビビ+コーザ@
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アルバーナ宮殿の中庭。
そこでコーザは夕涼みをしている。

彼は普段は首都から離れたユバで家族と共に生活している。
内乱終息後はオアシスの復興に夢中で滅多にアルバーナに来ることはなかった。
しかし最近は月に1度は昔からの仲間の結婚式に出席するために足を運んでいる。

今日もまた明日に迫った友人の晴れの日に備え、こちらに前泊する予定だ。
といいつつ、毎度、結婚式前日は誰かの家で飲み明かすのが恒例になっているため、今回も宿は無駄になるだろう。

階級制度がほぼ無いアラバスタ王国の王女も、結婚式には勿論出席する。
けれどさすがにただの飲み会にまで参加できるほど軽い立場でもなくなってしまった。
そんな彼女に同情しているというわけではないが、飲みに行く前にビビの顔を見に宮殿に顔を出すのも、いつの間にか習慣になってしまった。

「大人になったってことなんだろうな」

気軽に遊び歩けなくなったビビも。
そんなビビを気遣えるようになった自分も。
そして自分の家庭を作り出す仲間達も。

「独り言?」

目を開けながら実際は何も見ずに考えごとをしていたコーザは、ゆっくりと瞬きをした。
焦点を合わせ、ビビが目の前に立っていることに漸く気付く。

「今日もどっかに視察に行ってたんだってな。お疲れさん」
「待たせちゃってごめんね。昨日、北の地区で地盤沈下があったから規模を見てきたの。
道路が崩れていたけど、他に抜け道があるし民家も無事だったから明日から2週間かけて修復工事をすることになったわ」

視線を合わせることで了解を得、コーザの隣に腰を下ろしながら少しも疲れた様子を見せずにビビが言う。
緊急性のない作業にまで手が回るようになったことを喜んでいるのが見てわかった。

勿体ないな、と思う。
ビビももうすぐ18歳だし、何より王女様だ。
もっと化粧をして華やかな格好でニコニコしてれば、求婚者とか?来るかもしれないのに。
実際には少年のような服装で毎日仕事に明け暮れている。
本人がそれでいいと思っているのだから文句の言いようもないのだが。

「もう『砂砂団』で独身なの、リーダーと私だけになっちゃうわね」

コーザの考えていることが伝わったのか伝わっていないのか、ビビが言う。
コーザも、そういえば、と今なお親しい仲間達の顔を思い浮かべた。

「あいつら21と…19だったか?」
「そうよ、砂砂団内での結婚ももう3組目ね」

それにしても、結婚を決めるのが早い。
アラバスタはそれほど平均結婚年齢が低くないはずなのに、内乱からもうすぐ2年、若者達はどんどん自分の所帯を持っていく。
きっとあの荒れた日々を経て、大切な人間との穏やかな生活に憧れるようになるのは自然のことなのだ。

「驚異のベビーブームがくるな」
「もう少し福祉を万全にした方がいいわよね」

生真面目に頷くビビを横目で見てコーザは苦笑いを浮かべた。
こいつはちっとも自分の家庭を築くつもりがない。

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