未来捏造

□1ービビ@
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雨があがった雲ひとつない夜空。
夜気は先ほどまでの雨の影響で冷たく澄んでいる。

太陽みたいに明るい船長は、先ほど様子を見に行った時にはまだ気持ち良さそうに眠っていた。
彼が目を覚ましたら皆は次の冒険の旅に出てしまう。

私はどうしたいのだろう。

薄く光る星をバルコニーから眺めながらビビは自問する。
ずっとずっとアラバスタのことばかり考えていた。
アラバスタがクロコダイルから解放された後は当然この国の復興のために働くんだと思っていた。
けれど。

「よお」

ふいに後ろからかけられた声にビビは飛び上がるほど驚いた。
実際に肩が震えたのが、声をかけた人にはわかっただろう。
バロックワークスに居た頃の名残で人の気配には敏感なはずなのに。

それほど深く考え込んでいたということだろうか。

「おはよう、かしら?Mr.ブシドー」

なるべく何でもない風を装い、わざとゆったりと声の主を振り返った。
そうすると相手も何でもないように穏やかに目を細めてくれた。

「よくわかったな。今起きた」

了解もとらずにビビの私室をズカズカと突っ切ってバルコニーまでやってきたゾロは、先ほどまでビビがそうしていたように空を見上げる。
2人の距離は、少し手を伸ばせば簡単に相手の頬に届く近さだ。

ビビは夜空を挑むように眺めるゾロをそっと見遣ったものの、どうしてここに自分が居るとわかったのかなんて尋ねたりしない。
今までもこの方向音痴の剣士は、何故かビビのことだけは探し当てることができていたから。

「船で見るより星の数が少ないな」
「そうね、ここは明るいから」
「でもここから見る星も悪くねえ」

酒が欲しくなるな、そうぼやいて柵に寄りかかったゾロに、ビビは怪我してる時のお酒は毒よと顔をしかめた。

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