弾丸dream
□手
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ー手ー
石丸君と一緒に歩いてお喋りをしていると、私達の距離にが開いてしまう。彼は歩くのが早くて、私は遅い。あんまり急いで歩くのは好きじゃないから、自分のペースでゆっくりと。だから少し距離が開いてしまう。
石丸君も考慮してゆっくり歩いてくれるんだけど...途中から話が白熱するとそれに合わせて足取りも早くなって、結局いつもの早さに戻ってしまうのだ。
私が隣にいない事にすぐ気がつくと、チラリと後ろを向いて立ち止まってくれる石丸君のちょっとした優しさが好きだった。
「やはり桐枝君は歩くのが遅いのだな!」
「そう?石丸君も歩くの早いと思うよ?」
「むむっ…。ゆっくり歩いているのはどうにも性に合わなくてな...」
「私はゆっくりいる方がいいなぁ…一緒にいられるし」
恥ずかしいから聞こえないように小さくボソリと呟く。それに...どこかに行ってしまう感じがして時々怖かった。こんなコロシアイがある学園の中で。
「そうか…ふむ…それではこれでどうだ!」
手を繋ぎニッコリと笑い、彼は段々と顔を赤くし声を小さくしながら言った。
「これで僕は早くなっても君の歩幅に合わせられる!そして…同時に…君と、一緒にいられる、から…」
この人は本当に素直。バカをつけたいくらい素直で真っ直ぐで…時々私が思っている事を口に出す。不純異性交遊にならないのかな?って疑問に思ったけど、言うのはやめた。
顔が赤くなっていくのを見ていると、こちらまで顔が赤くなってきた様な気がしたから、私は必死に何か話しをして時を止めないようにする。
「そうだね!石丸君、頭がいいね!」
「そ、そうだろ!ハハハハ!それでは参ろう!」
緊張で汗ばみ、痛いくらいギュッと握る石丸君の手は強くてどこか頼もしく感じた。
こうやってずっと隣で一緒に笑いあえる日が続いたらいいのに。
でも…なんで神様はイジワルなんだろうね?
『桐枝君!』
いつの間にか後ろを向いて私の名前を呼び笑い、手を差し出してくれる石丸君はいなくなっていた。