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□1.絶望の始まり
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あのあと、河村さんは青学の大石さんに無事発見してもらい、手当てを受けていた。陰から見ることしかできなかった俺は少しもどかしさを感じていた。
「日吉、おまんはこれからどうするん?」
古びた廊下に窓からの微かな光が降り注ぐ。柱の陰に座る仁王さんはだるそうに俺を見上げた。
「俺はみんなと合流します」
「さよか」
「仁王さんは?」
「なんとか一人で生き延びてみせるぜよ」
最後の一人は俺じゃ、と意地悪く笑った。その様子はどこかこのゲームを楽しんでいるようにも見える。
「勝つのは俺ですよ」
「おまん、だんだん跡部に似てきたな…」
後輩は大変じゃの〜と暢気なことを言う。というかこの人は部屋を出てからずっとここにいたのだろうか。じきにここも禁止エリアになるはず。
「なぁ日吉」
「はい」
「もし赤也を見かけても近づいちゃならんよ」
「切原ですか?」
「そ。あいつが悪魔化するんも時間の問題ナリ。こんな状況じゃあもう…」
よいしょ、と仁王さんが立ち上がる。猫背な彼は背伸びをすれば俺よりもっと背が高いんだろうな、と思った。
「逃げんしゃい、日吉」
「は…」
次の瞬間、カキンッと乾いた金属音が響いた。仁王さんが俺の背後を目掛け、武器である金属バットを振りかざしていた。