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□1.絶望の始まり
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部屋を出るとここが学校の一室だということがわかった。どうやら廃校のようで今にも崩れてしまうんじゃないかというくらいボロボロだった。
「えっと、倉庫は…」
カバンの中から地図を取り敷地内に倉庫があるか確認をする。すると、倉庫ではないが小さな廃棄物置き場があることがわかった。きっとみんなここにいるはずだ。
「よし…」
階段をかけ降りて角を曲がろうとしたその瞬間、何かにぶつかった。勢いよくぶつかったため尻もちをついてしまった。
「いって…」
何だよと頭上を見ると、そこには立海のペテン師、仁王雅治がいた。白髪頭が印象的な彼は「プリっ」と訳のわからない言葉を吐くと、怪しげに笑った。
「日吉とかいったか」
「…はい」
「何で、こんなことになっとるんじゃろうなぁ」
「え…?」
急な問いかけに戸惑っていると、ちょいちょいと仁王さんが手招きをした。立てってことか。
「あれ、見えるか?」
「…!あれは、」
柱の陰から仁王さんが指差すところを見ると、青学の河村さんが自分の手首をカッターで傷つけている光景が目にはいった。
「自傷行為じゃ」
「止めなきゃ…!」
「やめとき、あいつは聞かんよ何を言っても」
「でもっ」
「手首を軽く傷つけたくらいじゃ死なん。それにあいつはビビってる」
「ビビってる…?」
よう見てみ。全身が震えとる。涙もぼろっぼろに流して。あいつはまだ死にたくないんじゃ、青学のやつらを残して、一人だけのうのうと死ねないんじゃろ。
「死ぬのは誰だって怖い」
仁王さんは独り言のようにポツリと呟いた。
「日吉、お前さんあいつを助けようと考えとるんじゃったら、その考えは捨てたほうがよか」
「え?」
「このゲームとやらはそんな柔なものは通じん。自分が生き残る、それだけを考えるんじゃ」
「自分だけが…」
他人を助けることは自分を犠牲にするのと同じじゃ。仁王さんが青い眼をこちらへ向けた。俺は図星で思わず目を逸らした。心の中を見透かされている気分だ。
「…すごいですね、仁王さんは」
「プピーナ」
また訳のわからない言葉を…。呆れたため息をつくと仁王さんはニカッと笑った。