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□1.絶望の始まり
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―…一時間後。
俺は無我夢中で走っていた。どんなに足が動かなくても、どんなに喉が渇いていようとも、走ることをやめれば、
捕まる。
1.絶望の始まり
部屋で名前を呼ばれたのは、十名近くいったところでだった。氷帝からは芥川さん、宍戸さん、向日さんがすでに部屋から出ていた。残りは青学五名、立海六名、四天六名、氷帝五名…。
「日吉若」
「…はい」
俺の番がきた。異様に渇いた喉を生唾で潤す。いざとなると緊張するもので、心臓が曲がったように感じた。荷物を受け取り中身を見ると、水と食料、ある程度のものは入っていた。そして肝心なのが武器…。運が良かったのか、中には短刀が入っていた。
「日吉」
跡部さんたちが心配そうな顔をしていたので、大丈夫ですよといった意味で親指を立てた。すると安堵の表情で向こうも親指を立てる。なんだこれ恥ずかしいな。
「早く行け」
榊先生の声に少し肩を強ばらせたが、一瞥してすぐに部屋を出た。そのとき先生の小さな声が聞こえた気がしたが、何を言っているか俺にはわからなかった。
「…とりあえず倉庫に行かなきゃ」
時間がない。これは時間との勝負でもある。短刀を腰に備え、俺は足早に倉庫へ向かった。