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□プロローグ
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「日吉っ…日吉!!」
「………向日…さ…」
うっすらと視界が開けると、いつも元気にウザいほど跳ねている向日さんがそこにいた。しかし、俺の目の前にいる向日さんは顔中、身体中に痛々しい傷を作って泣いている。なんで泣いてるんですか?顔、鼻水でぐちゃぐちゃですよ…。
「ごめんな…ごめんな日吉…っ」
「向日…さん…?」
「止められなかった…っ…あっ跡部も…侑士っ…も…」
跡部さん…に、忍足さんを止められなかったって…?ぼーっとする頭で思考を巡らせるが、うまくいかない。どうやら頭を強く打ったらしく後頭部がズキズキと痛む。今さら感じてきた痛みに眉を寄せた。
「日吉も…日吉も死んじゃうのか…?」
急に放たれたその言葉に、俺は驚いて向日を真っ直ぐ見つめた。向日さんも眉尻を下げながら俺を見つめる。
「死にませんよ…何を言ってるんですか?」
「本当か…?」
死なないよな、日吉?そう言って俺の左手を強く握る。ぎゅっと、有り余る力でその手を握り返した。向日さんの手は恐ろしいほど冷たかった。
「やだ…やだよ俺……一人は嫌だ…」
「向日さ…」
泣きじゃくる向日さんに触れようと右手に力を入れた。しかし右手が向日さんに触れることはなかった。…触れられなかった。
「俺の右腕…」
右腕はひじから下がない状態で、切断部分に布がきつく巻いてあった。見慣れたタオル、忍足さんのタオルだった。
「ああ…そうか…」
やっと働きだした思考は、俺に絶望を思い出させた。悪夢のような出来事。
この「バトルロワイヤル」という
馬鹿げたゲームを。