Guimauve

□約束・・・
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 ドクンドクン・・・――――

さっきから酷いくらい心臓が鳴る。

なぜかって?目の前の光景がどうしても信じられないから・・・。

零が吸血鬼だなんて――――






「・・・・・・優姫・・・朱姫・・・」





気まずい沈黙のなか零が口を開いた。





「俺は・・・・・・・・・」





 ドクンドクン・・・――――

ああ・・・心臓の音が五月蝿い・・・。

零が動き出した。

それと同時に怯えたように体を震わせる優姫。






「あ・・・・・・っ」






零は優姫の震えに気づいたのか止まる。

その姿にはっとする優姫。

そしてそれをみてなにもできない私。

再び落ちる沈黙・・・。






「優姫・・・!?」




下から声が聞こえ振り向くとそこには枢が現れた。






「か・・・枢センパイ・・・」







その声に振り向いた優姫、そしてその姿をみた枢は表情を変えた・・・―――

・・・この状況前にも見たことがある・・・いったいどこで・・・?

働かない頭をフル回転させていると・・・







「血に飢えた獣に成り下がったか・・・錐生零」






枢がそう言ったのが聞こえ、見ると優姫と私を背に回した。

あ・・・。

その姿をみて思い出した・・・私たち姉妹の記憶の始まり・・・あの時と同じだ・・・。





「や・・・」





優姫もそれを感じ取ったのか顔色が青くなっている。

“零が殺されてしまう”





「やめて枢センパイ!!」





優姫が零の前に立ちはだかる。

だめ・・・枢・・・やめて・・・!

私も行こうとしたとき、優姫に変化があった。

いきなり倒れたのだ。






『ゆ・・・ぅ・・・き・・・?』

「・・・・・・・・・・優姫・・・・・・?」






私と零が同時に呟く。

頭が真っ白になった。

優姫の元に駆け寄り息をしているか確認した。






『・・・良かった』






小さく息をしていることが解りほっとする。






「むごいくらい血を貪ったね優姫が・・・立っていられなくなるまで」






後ろで枢がそういった。





「朱姫避けて?」

『・・・・・・・・・』






私が無言で避けると枢は優姫を軽々と抱き上げた。






「そんなに優姫の血は・・・おいしかったかい・・・・・・?」






冷えきった瞳で零を睨む枢・・・。





「零・・・・・・」





優姫の声がした。





「枢センパイおろして・・・零が・・・・・・」





抵抗する優姫。

言いたいことが痛いほど分かる・・・。





『優姫・・・零は大丈夫よ・・・?だから・・・安心して?』





安心させるように優姫に微笑むと抵抗をやめた。






『枢・・・優姫を医務室に・・・』

「・・・・・・わかった」




枢が頷く姿を確認すると後から来た理事長に提案する。





『理事長・・・少しだけ零のこと私に任せてくれませんか・・・?』

「朱姫!」





突然の提案に枢は怒り、理事長は困惑する。

私は枢の頬を撫で微笑んだ。





『大丈夫よ枢。それより・・・優姫をお願い』

「・・・・・・」

「・・・後でちゃんと優姫に顔、見せるんだよ?」

『もちろんです』






優姫を連れて進む枢たちを少しの間見送ったあと零に視線を戻す。





『零・・・・・・』

「・・・くるな・・・」





拒絶する零。

零の言葉を無視して近寄る。





『・・・・・・』

「・・・・・・朱姫・・・っ」






 ぎゅ・・・――――

優しく、零がこれ以上壊れてしまわないように抱き締めた。






「やめ・・・ろ・・・」

『やめない・・・こうしないと・・・零が壊れてしまいそうだから・・・』

「朱姫・・・・・・・・・」






恐る恐るだったけれど抱き締め返してくれた零。






『もう・・・大丈夫だから・・・恐くないから・・・』






その言葉を繰り返し繰り返し言う。

零が安心してくれたら・・・・・・そう思いながら―――
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