BRAVE10
□第4戦
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久遠は自分の部屋を貰えたことで最近はご機嫌でちょこちょこと城の中を歩いてまわっている
今日は朝食の御膳を台所へと運んでいた
「あ…のっ!久遠様御膳お持ちいたします!」
久遠とそう年も変わらない御膳をたくさん持った少女に声をかけられる
先の一件から久遠は女中達の中で人気No.1に踊り立った
そんなことを久遠が普通なら知るはずもないのだが
久遠は城の噂で自分の人気が上がったことは耳にしていた
『いいよ、これくらい僕が持つし
君のが持ってるし
てか僕も一緒に運ぶから貸して』
久遠はひょいひょいと女中の御膳を何個か取り上げる
言い方は特に優しいわけではないのだが紳士的なこの行為が女性の的をついていくのだ
『今日祭なんでしょ?
君は何かするの?』
そう、今日は豊饒の祭があるのだ
その準備からか城内は朝から忙しそうで皆走りまわっている
「私はおだんごを作ります」
『へぇ!おだんごかぁ
それって僕も手伝ってもいい?』
久遠はこんな身なりではあるが料理はなかなか得意なのだ
しかし、女中達には幸村に仕えているお偉いさんという認識があるので手伝いなんてさせていいものか、と困ったような顔をして言葉をつまらせる
「え、ですが…」
『僕がしたいんだ』
「では、せめて顔と首の布は外していただかないと…」
『仮面ならいい?』
「それなら…よろしいかと…」
こうして久遠は団子作りを手伝うことになった
「では久遠様は生地を作っていただいてよろしいですか?」
『はいよー』
「ものはここに置いておきましたので」
久遠は鬼の仮面を被りながら作ることになった
まずは必要なものがどこに置いてありどのような形をしているのかを手で調べる
そうして生地を感覚で作りあげていく
その動作はやはり目の見える人との差があった
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