Short Story
□「証」
1ページ/2ページ
『はぁ、はぁ・・・』
「もう終了かい?まぁ、これでも随分と粘った方かな?」
『はぁ、はぁ・・赤司、く、ん・・・。』
隙をついて逃げようと試みたが、結果は同じで逃げられない。赤司君には全てお見通しなよう。
あたしを自分と壁の間に挟んで、両手はあたしの顔の横。
ダメだ・・・逃げられない。
赤司)「何で僕から逃げるんだい?」
『・・っ!いやっ・・・!!』
赤司)「・・質問に答えてないね。答えられないような悪い子には・・・」
「おしおきだ」とあたしの耳元でわざとらしく続きの言葉を紡ぐ。
その言葉と彼が自分の懐に手を伸ばす仕草を見て、本能的に恐怖を感じた。
無意識に、本能的に・・・。
やはりあたしの勘は間違っていなかったらしい。彼が懐から取り出したのは、愛用のハサミだった。
赤司)「何をそんなに怖がっているんだい?いつものことだろう?」
そう言って笑う赤司君の笑顔に背筋が凍る。そして、あたしの左腕にある「証」もうずく。
「証」とは彼があたしの左腕にハサミやらカッターやらでつけた痕。
それはもう、見るのも無残なほどで・・・。
『・・・!!』
いつの間に・・・。
赤司君があたしの左腕の袖を静かに捲りあげていた。
そして、あたしの「証」にその手が触れる。
赤司)「美しいな・・・美玲が僕のものだっていう印だ。」
うっとりとした表情を浮かべ、あたしの左腕を愛おしそうになでる。
・・・否、左腕の「証」を。
『 』
赤司)「ふっ・・・僕がそうなら、君もそうなんじゃないか?」
あぁ・・そうか。彼が「 」ならあたしも同じなのか。あたしも、彼と同じ・・・。
はぁ・・・カッターよりもハサミの方が痛いのに。
『 』
赤司)「どうもありがとう。」
もう一度繰り返した言葉に、極上の悪魔の笑みを浮かべながら、
彼はあたしの左腕に刃を突き立てた。
「証」
彼もあたしも同様に「『狂ってる』」
→next・あとがき