銀魂 短編


□俺は神様を憎むだろう
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「あら、いらっしゃい」

立派な門を無断でくぐり、屋敷の中庭へ足を運ぶと、縁側から顔を覗かせた女。

今ではすっかり顔見知りになった。

加えていた煙草を携帯灰皿に押し付け、庭に血を吹いて倒れている上司を一瞥する。

見飽きたその光景にため息をつきながら、俺はその女――志村妙に言う。

「悪いな」

「いえ、もう退治しましたから。後処理のほうはお願いします」

穏やかな声で言うが、その奥にはまるで悪魔が放つかのようなどす黒いオーラが垣間見得る。

彼女は怒っている時も、悲しい時も、嬉しい時も、いつも笑っていた。

実を言うと、この女は苦手だった。

だから早くこの場を抜け出したい。そう思って、倒れている近藤さんの体を持ち上げた。

「邪魔したな」

「もう帰られるんですか?せっかくいらしたんですから、お茶くらい飲んでいって」

「それ、昨日も言ってたぞ」

情けないことにストーカー行為に熱を入れる上司を回収するのは、いつも俺の役目だった。

昨日も、一昨日も。時間さえあればうちのバカな愛のハンターは彼女の元を尋ね、そしてことごとく返り討ちにあっていた。

その度、俺はこの邸宅を訪れことになる。

しかし、彼女に一言詫びを入れ、近藤さんを回収するだけの日常が、いつの間にか彼女に呼ばれて二人で茶をするまでになったのはいつからか。

最近はよく、この家で休憩を過ごすことが多かった。

別に、俺が好き好んで彼女と茶を飲んでいるのではない。むしろ、彼女と一緒にいるのは何かと厄介な気がして、いつも俺は断っていた。

だが彼女はいつも、

「少しくらい、いいじゃない」

そう言って笑い、そして俺の返事もなしに茶やら菓子やらを二人分用意した。

「――なぁ、俺といて面白いか」

今日も無理矢理客間へ引き込まれた俺は、唐突に尋ねた。

彼女は不思議そうな顔をして、そしてフッと口元を緩める。

「はい。なんだか、土方さんといるのが好きみたい」

「…どういう意味だ」

「どうって…聞きますか?」

「いや、いい」

彼女のその先の言葉はなんだか危険な気がして、俺は遮るようにして言い、出された熱い緑茶を一口飲んだ。

冷えた体に染みわたる。ほのかな苦味と甘味が、疲れた体を癒してくれた。

「いつもと…違うな」

長い沈黙が続いて、先に口を開いたのは俺だった。

一口飲んだ今日の茶と、今までの茶。同じ緑茶なのに香りがまるで違ったのに、俺は思わずそう言ってしまったのだ。

よその家の茶の味を覚えるほど、俺は味覚が敏感なのか、またはそれだけこの家で茶を飲んできたからか。おそらく後者であるだろう。

俺の言葉に、彼女は驚いていた。

「分かりますか?昨日、ご近所さんから高級なお茶を頂いたので、淹れてみたんです。土方さん、スゴいですね」

「別に…なんとなくだ…」

素っ気ない返事をする。

そんな俺の態度でも、彼女は嬉しそうに笑っていた。

「…そういえば、土方さん。なかなか私の目を見てくれませんよね」

「は…?」

「ふふ、私といる時、いつも目が浮わついてますよ」

笑って言うが、その時彼女の声の調子が明らかに変わったのに、俺は気づいてしまった。

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