銀魂 短編
□"好き"とノートに書いてみた
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もし、先生に好きだと告白されたら、私はどう答えるか。
「もちろん、イエス!」
修学旅行に学祭、球技大会の写真を眺めてはうっとりする私。かなり変態だと自負しているが、私はいつからか、彼から目が離せなくなってしまったのだ。
彼、とは私のクラスの担任、坂田銀八先生。
いわゆる禁断の恋というやつにハマってしまった私は、毎日のように、携帯のフォルダに入っている先生を見つめて、妄想して、にやける。
なんとも不純な女子高生。
「うふふ〜先生かっこいい〜」
クラスの皆にこの事を話したら、あんな死んだ魚のような目をしたおサボり教師のどこがいいんだ、と笑われたが、気にしない。
私にとってはそのやる気のない瞳も声も、立ち姿も、愛しいほかにない。
最近の趣味は、唯一先生の魅力を分かってくれるクラスメイトのさっちゃんと、盗撮した先生の写真を交換したり、先生との関わりを自慢しあったりすることだ。
彼女もまた、先生に本気らしい。
さっちゃんはいつも堂々と先生に好意を示していて、ほぼストーカー状態。
でも私も負けてないはず。
いや、ストーカーじゃなくて、先生への想いの話。
「今日はどんな質問しようかな…」
毎日の宿題の代わりに書かされている日記のノートを見つめる。
私はその日の出来事を書いた後、いつも最後の一文は先生への質問にしていた。
昨日の質問は、“たい焼きは頭から食べる派ですか?それともしっぽから食べる派ですか?”という、はたから見ればどうでもいい質問。
だけど先生は、いつも私の質問に答えてくれる。
“腹にかぶりつく派です”の答えに笑みがこぼれた。
国語教師とは思えないような殴り書きの字でいつも書いてあった。
こんな他愛ない小さなやり取りでも、私にとっては嬉しくて、ドキドキすること。
でも、そろそろ私もさっちゃんみたいに想いを表に出してもいいのかもしれない。
そうでなければ、生徒から恋愛的に好かれているなんて普通は考えないはずだ。
「…よし!」
さっちゃんに負けてられない。
程よく冷めたミルクティーを飲み干し、止めていたペンを再び動かす。
「先生は…私のこと……」
呟きながら綴った質問は、きっと先生を困らせるだろう。
「先生……」
“先生は…私のこと好きですか?”
“私は、先生のことが好き”
最後の一文に、こう書いた。
“好き”とノートに書いてみた
返却されたノートには、“好きだ”の三文字。
いつものような、殴り書きの答えがあった。
end
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