銀魂 連載


□副長補佐官
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「姉上…俺ァどうしたらいいんでしょうねィ…」

薄桃色の便箋を半分まで文字で埋めたところで、俺は筆を止め一人呟いた。

一泊二日という短い慰安旅行も終わり、気づけば茹だるような暑い夏までも終わったようで、あたりはひんやりとした秋風が吹き抜ける。

それにしても、この夏はいろいろなことがあった。

真選組初の女隊士導入から全ては始まり、俺はいつしか彼女のことが気になり始めた。

今まで歳の近い女(チャイナ娘は別だが)とロクに話したことも付き合ったこともなく疎遠がちだったのだが、彼女は俺の思う世の中の女とは少し違った。

容姿端麗、冷静沈着、大胆不敵…

黙っていれば仕事もできる、一見非の打ち所のない彼女だが、腹の中は真っ黒なため、残念なことにこの俺とは気が合うようで。

俺の悪ふざけに付き合ってくれる唯一の理解者だった。

だけど彼女に対して少し気に入らないことは、俺を子供扱いすることだ。

これは彼女に限ったことではないのだけど…

姉面をするのは、実の姉一人で十分だ。

「あーあ…もうちょっと焦ってくれたら、面白かったのに…」

子供扱いされたくなくて、彼女の身体に手を出した。

あの時、そういう経験なんて無い俺は必死だったのに、彼女はいかにも慣れた様子で…自分がガキであることを感じただけだった。

それでも、酔いが覚めたら俺とセックスしたという現状に焦りを見せるのではないかと期待していたのだが――目覚めた彼女もやはり冷静で。

普通気まずい雰囲気になるはずなのに、あれからというもの特に関係に変化はない。

“好き”とまではっきり告白したのに…

返事はいらない、と格好つけたはいいものの、本当は彼女がどう思っているのか知りたくてたまらない。

けど逆に、知るのは怖かった。

期待外れの事態に満足できず、土方さんまで煽ってみた。

少しだけ反応を見せたものの、すぐに顔に出す彼にしては反応が薄かった。

それでまた、がっかりする。

「つまんねぇ…やっぱり、つまんねぇでさ、姉上」

こんな時には姉上に会って、存分に癒されたい。

姉上なら、きっと自分のことを気にかけてくれる。

そう思って、久しぶりに手紙なんて書いてみる。

「総悟」

襖越しに聞こえるその声に返事はしない。

どうせさっさと起きろだの、仕事しろだの、真面目な副長様はわざわざ言いに来たのだろう。

「何勝手に開けてんですかィ」

静かに開いた襖に目をやり、俺は背後に立つ土方さんにそう言った。

「珍しく仕事してんのか?今夜は嵐だな」

「失礼ですねィ。分かったらさっさとかえってくだせェ、土に」

「一言余計なんだよ」

「アンタもでしょ」

サボるなよ、と一言残し、彼はまた静かに襖を閉めて、去って行った。

「…ま、こんなモンでいいか」

“いつか、江戸に遊びに来てください”

そう書いて、筆を置いた。

書き終えた手紙を見つめ、自分の文章力の無さと字の汚さに、ため息が出る。

剣を振るってばかりでデスクワークなんて滅多にしないから、仕方がない。

頭の上で手を組んで、そのまま上半身を後ろに倒す。

勢いよく寝そべったせいで、長く伸びた前髪が目にかかる。

それを指でかきあげながら、俺はもう一度息を吐き出した。


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