銀魂 連載
□慰安旅行
1ページ/4ページ
「はぁ?慰安旅行?」
とある日、世間は夏休みが終わった頃、またも近藤が唐突に言い出したことに、土方は眉をひそめた。
近藤は決心に満ちた顔で、不満げな様子の土方に言う。
「そうだ。みんなで温泉に行くことになった」
「行くことになったって…また将軍のお守り旅行だろ。オレはお断りだぜ」
「いや、今回ばかりは真選組メインの旅行だ。とっつぁんにも許可はもらっている」
「嘘をつくんじゃねぇよ。あのオッサンがそんなこと許可するわけねぇだろ。また江戸をがら空きにするつもりか」
ついこの間海水浴に行ったばかりだというのに、どれだけ浮かれたら気が済むのだ。
警察ということを忘れているのではないか、と土方はただでさえ不安でいっぱいだったのに。
そこからさらに旅行だなんて、許されるはずがない。
のだが――
「あ!和葉ちゃん、おつかれさま」
さりげなく局長室に入ってきた和葉は、どや顔でこちらにやってくるなり、こう言った。
「ま、私にかかれば警察庁長官だろうが何だろうがイチコロですよ」
「竜崎、お前…」
「さすが和葉ちゃん。いやぁ、とっつぁんは可愛い子には弱いからなぁ。グッジョブだ!」
満面の笑みを浮かべる近藤に、無表情で親指を突き立てる和葉を見て、土方は苦々しく呟いた。
「…転職でもすっかな…」
吐き出された紫煙が、虚しく空気に溶けていった。
――世の中、終わってやがる。
.