銀魂 連載


□どちらかといえば猫派
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「あー…暑い…」

見廻りの途中、あまりの暑さに身が持たず、近くの公園でお茶を買い休んでいた。

丁度、木陰に隠れたいいベンチがある。

そこにだらりと腰をかけて、買ったばかりのお茶を一気に口へ流し込んだ。

ひんやりと冷たいそれが、喉を伝うのが分かる。

こうも暑くっちゃ外で見廻りなんてやれたもんじゃない。

車の運転が出来ないから、こうして歩いて見廻りするしかないのだが、
この炎天下を歩き続けるのはかなりの苦痛だった。

「珍しく今日はサド野郎じゃないアル」

「…ん?」

閉じていた目をうっすら開ければ、そこには真っ白な透き通るような肌をした少女が立っていた。

赤いチャイナドレスに身を包み、藤色の傘を差している彼女は、私をまじまじと見下ろした。

そんな彼女の隣には、真っ白な巨大犬もいた。

「神楽ちゃん…だったっけ?あと、定春」

「覚えてたアルか?ちなみ私は覚えてないネ」

「和葉だよ、和葉」

「あーそうそう、それネ」

こんなところで万事屋のお嬢さんに出会うとは、奇遇だ。

彼女はよくこの公園に来ているようだったが。

「隣、いいアルか?」

「ああ…うん」

神楽ちゃんはちょこんと私の隣に腰をかけた。

日陰であることを確認すると、彼女は傘を閉じ、ベンチの脇にそれを置いた。

「こんなに暑いのに犬の散歩とはえらいわね」

「まあナ。でも、今は散歩というより休憩ネ」

「そう…私も休憩しているとこだったの…」

「えらく疲れた顔してるアルな」

汗だくの私を眺めて、神楽ちゃんは心配そうに顔をしかめた。

そういえば、さっきから妙にやる気が出ないというか、集中できない。

………いつもだけど。

「あ、そうだ。このへんで猫見なかったアルか?」

「猫…?」

神楽ちゃんは一枚の写真を取り出して、私に見せてきた。

可愛らしい茶色いトラ猫が写っている。

赤い首輪をしているが、見覚えはなかった。

「悪いけど、見てないわ」

「そうアルか…私たち、今依頼されてこの猫探してるネ。昨日から探してるけど全然見つからないアル」

「大変ね…万事屋ってのは…」

「珍しく入った仕事だから張り切ってみたけど、こればっかりはなかなか上手くいかないネ」

彼女は悩ましげにうつむいた。

逃げ出した猫なんて探そうと思って見つかるはずもないのに、ご苦労なことだ、と思った。

「ま…もし見かけたらとっ捕まえとくよ」

私はそう言って、ベンチから立ち上がった。

そろそろ戻らないと、近藤さんや土方さんにどやされる。

「もう行っちゃうアルか?」

「ええ。仕事が残ってるからね。あなたも暗くならないうちに帰りなさいよ」

そう言い残して、私は公園を後にした。


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