銀魂 連載
□溢れる想い
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「そうだったのか…和葉ちゃんも、苦労したんだな…」
和葉が話終えると、三人とも難しい顔をして立ち尽くしていた。
近藤が、慰めるように優しい口調でそう言う。
和葉は自嘲するかのように、フッと笑った。
「苦労なんて大したことじゃないですよ。私は、ただ独りになるのが怖かっただけだったのだから…」
「なんだ、それだけか」
言ったのは、土方だった。
彼はいつものように厳しい表情をして、和葉に言う。
「独りが怖いだ?上等じゃねぇか。だったら俺たちがおまえを愛してやればいいんだろ?お前が来た場所(真選組)は間違ってねぇよ…」
「!」
いつになく真剣な面持ちで言う土方の目は本気だった。
和葉は唖然と、土方を見つめる。
「俺たちをあいつら(見廻組)と一緒にするな。俺たちは、お前を――」
彼はなぜがニヤリと笑ってこう言った。
「仲間を独りにはさせねぇよ」
自信に満ちたような、照れ隠したような、なんともいえない土方の表情に、和葉は拳を握りしめた。
和葉は、少しの間俯いた後、近藤と沖田の顔も確認する。
二人は土方の言うことに同意するように、優しく微笑んでいた。
あの悪戯な笑みしか浮かべない沖田でさえも、その表情はいつになく柔らかい。
「真選組はどうも野郎ばっかでいけねーや。少しは、色気が欲しいもんでィ」
「恋愛相談は、やっぱり、女の子にも相談しないとなぁ」
沖田と近藤は言いながら、病室を出て行った。
そして土方は、無言で和葉に何かを渡して二人の後を追った。
戸惑う和葉は、一人病室に残される。
静かになった病室で、一人肩を震わせた。
「……今日くらい……いいよね……」
頬を伝ったそれは、一体いつから溜めていたものなのだろう。
溢れ出したら、止まらなくなった。
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