銀魂 連載
□万事屋
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「ねぇ、銀ちゃん」
「あ?」
「私たち、なんで手錠かけられてるアルカ?」
赤いチャイナ服を着た少女――神楽は、両手にかけられている手錠を見つめて、隣にいる銀髪パーマの男に尋ねた。
男――坂田銀時は、死んだ魚のような目をして、淡々と答えた。
「それはな、善良な俺たち市民を、そこのチンピラ警察が不当逮捕したからだよ」
「何が不当逮捕だ!てめぇらまた俺の邪魔しやがって!れっきとした公務執行妨害だ!」
パトカー内でぶつぶつと話す銀時に向かって、土方は怒鳴った。
すると銀時は、死んだ目をカッと見開いて、土方に迫った。
「言いがかりもいいとこだな。俺たちだって仕事してたんだよ。公務執行妨害されたのはこっちのほうなんだよ!」
「ただ散歩してただけだろうが!おまえらの仕事のどこが公務だ!公害の間違いだろうが!」
「てめぇ警察のくせに市民を侮辱してんじゃねぇよ。大人しく手錠を外しやがれ」
「そうアル!定春だけ置いていくなんて動物愛護団体に訴えるアルよ!」
「てめぇらいいから大人しく捕まれ!」
「んだとコラ」
「やんのかコラ」
「ちょっとちょっと!やめてくださいよ!これ以上突っかかったら、本当に捕まりますよ!」
睨み合う銀時と神楽、土方を引き剥がしたのは、メガネをかけた……
人間をかけたメガネだった。
「誰が人間をかけたメガネだ!ナレーションおかしいだろ!」
うるせえ、黙れメガネ。
「何?そんなに嫌われてんの、僕?なんか、作者に悪いことした?まだ何もしてないよね?登場シーンだよね?」
「おい新八、おまえ誰と話してんだよ」
「あ…いや、その…天の声的な…。なんか、僕にしか聞こえないやつです」
銀時はメガっ…少年の答えに怪訝な表情を浮かべた。
「…もういいです。すいませんでした」
少年――志村新八はげっそりした様子でそう言った。
「誰のせいだよチクショー…」
「とにかくだ!今日という今日は、お前らを見逃すわけにはいかねぇ。大人しく連行しろ」
土方は苛立たしげに言うと、パトカーを走らせた。
なぜ自分ばかりいつも面倒な奴らに出くわすのだろうか。と土方は思う。
先日の女隊士に始まり、いつも問題ばかり起こす万年金欠侍たち。
市中見廻りに出かけたら、江戸の町を走り回る巨大な犬に突撃され、危うくパトカーが壊れるところだった。
フロントガラスは、粉々に割れたが…
そしてその後を追ってきた銀時は、土方にその巨大な白い犬――定春の治療費を請求してきたのだ。
わけの分からない理屈を並べる彼らと口論が始まり、今の状況に至る。
「なんでこんなどうでもいい奴らの面倒みなきゃいけねーんだ」
土方は舌打ち混じりに呟いた。
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