銀魂 連載


□謎の女隊士
1ページ/2ページ

「えー、今日は、新しく真選組の一員になる新隊士を紹介する」

朝の会合で、真選組局長の近藤勲が前に立って言った。

そしてその場にいる隊士たちは皆、驚いた表情を浮かべ、周りの者たちとザワザワと話していた。

そんなことは聞いていないぞ、と。

そしてそれは、副長である土方や沖田も同じだった。

「これは松平のとっつぁんが決めたことでな。俺もよく分からん。とりあえず、紹介する」

そう言って、近藤は部屋の外から、その新隊士を連れてきた。

その人物を見て、その場の全員が驚愕した。

「「お…女ァァァ!?」」

真選組ではありえない突然の女隊士導入に、皆が、口をそろえて言う。

そして一人、驚きのあまり声も出せずに固まっている者がいた。

手に持った煙草は口に運ぶ様子もない。

その新人隊士は、騒がしい様子に構わず紹介を始めた。

「真選組“十一番隊隊長”に就任しました、竜崎和葉と申します。どうぞよろしくお願いします」

ニコリと笑みを浮かべて言う彼女に、不覚にも隊士たちは顔を赤らめた。

竜崎和葉と名乗った彼女は、落ち着いた雰囲気の美女だった。

背中まである長い赤髪をハーフアップにしていて、瞳は澄んだ紫色をしていた。

女性用の制服も、良く似合っている。

見た感じからして10代後半くらいだろうか。

だとしたらずいぶん若い新人がやって来たものだ。

「そういえば、十一番隊が出来るなんて話、この間してたよな」

「ああ、隊員が増えて再編成するみたいな…」

「でもまさか新人が隊長勤めるとはな。しかも――」

「どういうことだ!!」

ざわつく空気を遮ったのは土方だった。

彼は立ち上がって、和葉に言った。

「俺は認めねえ!こんな小娘に隊長なんざ勤まるかよ!」

「おい、トシ落ち着け」

勢い良く和葉に迫る土方を、近藤が落ち着かせる。

「これは警察長官のとっつぁんが決めたことだ。それに、和葉ちゃんはとっつぁんお墨付きの優秀な人材だそうだ。心配はいらねえよ」

「だが…」

「いいんじゃないですかィ?ヤローばっかでむさ苦しいし。見廻組にゃ女副長がいるんだし」

沖田にも言われて土方は納得のいかない様子でありながらも、一時黙った。

そして和葉のほうを睨むように見つめる。

(こいつ…どこかで…)

土方は和葉と会うのは初めてではない気がして、考え込む。

そして脳裏に浮かぶのは、あの日の女だ。

「残念です。認めてもらえないなんて」

「あ?」

「これからは認めてもらえるように頑張りますね」

和葉はまたニコリと微笑んで言う。

土方は小さく舌打ちをする。

「俺はそういうことを言ってんじゃ――」

「女だから駄目なんですか?」

「!」

気づけば、いつの間にか首筋に刃を向けられていた。

和葉は少し声を低くして言う。

「女をナメると、痛い目みますよ」

妙に自信たっぷりに言う彼女は、不敵に笑みを浮かべる。

その異様なオーラに、土方は覚えがあった。

「おまえ…あん時の…」

「また会えましたね…土方さん」

土方にだけ聞こえるようにボソリと言って、和葉はゆっくり刀を鞘にしまった。

唖然とする隊士たちに向かって、和葉は先程の穏やかな様子に戻って言う。

「なんてね」

「…………」

隊士たちは言葉もなく、にへらと笑う彼女の様子をいぶかった。

そして土方は、ただ一人苛立たしい様子で煙草をくわえるのだった。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ