カカシ 短編
□WHITE DAY
1ページ/4ページ
この話はRED DAYの続編です。
2月14日。
そういえばあの日、オレはさんざんな目に遭ったんだった。
今日は3月14日。
カカシはカレンダーに元々記されている“HWITE DAY”の文字を見て、ちょうど一月前のことを思い出していた。
あの日、バレンタインデーと騒がれていたあの日。
カカシはルミからもらったバレンタインチョコレートのせいで、二・三日程舌の感覚がおかしくなった。
どうしてチョコレートを食べたのにそんなことが起きたかと言うと、よく言えば、ルミのささいな気遣いが原因であろう。
ルミから渡されたものは、甘いものが苦手なカカシのためだけに作られた、大量のスパイスを練りこんだ特性チョコレートだったのである。
元々辛党の彼女に、“辛い”の限度なんてものはない。
故に、味わったことのないその激辛に襲われたカカシの舌は、しばらくの間麻痺してしまったのだ。
ピリピリ、ジンジンとした痛みが完全に消えるまで、思ったよりも時間がかかったのだった。
「あんな仕打ちを受けて、なんでホワイトデーに返さなきゃいけないんだ…」
アスマが紅にお返しをするというので、セツナにも返すべきかと尋ねたら、「当たり前だ」とあっさり言われてしまった。
(まあ、ルミも悪気があったわけじゃないし…)
カカシは部屋を出て、商店街をぶらつきながらホワイトデーのお返しを探し求めた。
今までバレンタインチョコレートは嫌というほど大量にもらったが、お返しをしたことなど一度もない。
故に、どんなものをあげたらいいのか迷っているところだった。
「どうしよっかなー…」
「カカシさん?」
「ん?」
呆然と歩いていると、後ろから声をかけられた。
「何してるんですか、こんなところで」
「ああ、ちょっとね。おまえも今日は休みか?」
振り向いた先にいるルミに、カカシはそう尋ねた。
彼女はニコリと愛想のいい笑みを浮かべて答える。
「はい。今から家に帰るところです」
まさかお返しをする相手にこんなタイミングで会うとは…
未だにお返しを用意していないカカシは、どうしようかと考え込んだ。
「そうか…うん…」
「?カカシさん?どうかしました?」
ぐいっとカカシの顔を覗き込む。
心配そうな瞳を向けられて、カカシは我に返った。
「ああ…そういえば、おまえにはお返ししないとな」
ふと、思いついた。
「お返し?なんの?」
心当たりのない様子で首を傾げるルミを見下ろしながら、カカシはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「バレンタインデーのお返し。ちょっと、家来てくれない?」
「え?」
(ちょっと、意地悪してみようかな)
カカシは、戸惑うルミを連れて家へと帰った。