カカシ 短編


□やっぱりアナタが好きだった
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近頃、嫌な噂が耳に入る。

とルミは思った。

恐らく、こう思っているのはルミだけではないだろう。

特に独り身の女性にしてみれば。

「彼女と同棲…か…」

里で一番モテると言っても過言ではないある上忍の男に、

最近、新しい彼女ができたという。

長らく恋人というものに興味を示さなかった彼が、彼女と同棲までしているという噂に、

ルミも含め忍たちの間では強烈な話題になっているのだった。

「ルミ」

名前を呼ばれて振り返ると、そこには噂の上忍がいた。

「カカシさん…!おつかれ様です」

はたけカカシ。

里一番のエリート忍者にして、里一番のモテ男。

ルミの先輩でもあり、任務を共にすることも多い。

密かに想いを寄せ続けて、もう何年が経ったであろうか…

(彼女がいるからって…嫌いになれるわけないじゃない…)

今でも好意の目を向けてしまう自分が嫌だった。

好きな人の幸せを素直に応援してあげられるほど、人間できてはいないのだ。

悔しく虚しい想いに浸りながら、いつもと変わらぬカカシの姿にため息をついた。

「どうした?何かあったか?」

妙に疲れきったルミの顔を覗き込んで、心配そうにカカシが言った。

「いえ…別になにも…」

ルミは素っ気ない返事をした。

(これだから、女たらしだとか言われるのよ…カカシさんは!)

誰にでもふいに優しくするカカシに、ルミは複雑な気持ちになる。

以前は、この優しさが好きだったのに…

自分がどんどん“嫌な女”になっている気がして、すぐにでもカカシの前から消えたかった。

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫です!」

少しだけルミの口調がキツくなる。

その顔には怒りと焦りが表れていた。

「何か怒ってる?」

「怒ってないです!じゃあ、私もう帰るんで。さよなら」

「えっ…あ、ちょっとルミ!?」

いつになく苛立たしげなルミの姿を追うことはできず、カカシは難しい顔をして一人考え込むのだった。
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