銀魂 短編


□鬼も福も内
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「お前ら、いくぜィ!!」

朝の会議が終った瞬間、沖田のそのかけ声に大人しく座っていた隊士達が一斉に立ち上がり、威勢の良い返事をする。

一人だけその場で座ったままの人物は、何事か、と驚いた表情で隊士達を見上げた。

「何してんだお前ら。さっさと持ち場につけ!」

ニタリ、と悪戯な笑みを浮かべる部下達に嫌な予感がよぎったためそう叫びながら身構えた土方だったが、沖田の指示により隊士達はそれぞれポケットからビニール袋を取り出し、そしてその中に入っていた豆を土方へ向けてスパーキング!!

「鬼は〜外〜!!」

「いっ!痛っ!てめぇら!何すんだコラ!」

「鬼は外〜でさァ〜皆ァ、まだまだ鬼は倒れてないぜィ。遠慮なく投げろィ!」

「うおりゃあァァァア!!」

男達の雄叫びと共に大量の豆が、一点に投げつけられた。

――と、いう出来事は今ではすっかり終った後である。

一対数十人。真選組“鬼”の副長が一体何粒の豆をくらったのかは分からないが、部屋中見事に豆だらけ、足の踏み場もないほどとなったのだからよほどの量だ。

しかも、それらを片付けるのはずいぶんと面倒なこと。

一瞬で終わった豆まきが行われたのは、今から三十分も前の事だが、畳の隙間に踏み潰されて砕けた豆の殻やカスが詰まってしまっていたりして、そう簡単に片付けは済まなかった。

「ああ、もう、廊下にまで…」

部屋の外にも散らばった豆にため息をついたのは、掃除機を手にした咲夜だ。

豆をまくだけまいて皆、土方から逃げるように仕事についてしまったせいで、本日唯一非番であった咲夜は一人で片付けをしていた。

自分も参加していた一人であったから片付けをするのは仕方ないのだが、それにしても皆やるだけやってやりっぱなし。

貴重な非番を掃除でつぶされる身にもなってほしいものだ、と思いながら手を動かし続け、ようやく掃除を終えたのだった。

「そういえば、まだ豆が残っていたような…」

あれだけ投げたが実はまだ少しだけ真新しい豆が残っていたのを思い出す。

「…副長、部屋にいるかな?」

自室に戻ってきた咲夜は、残りの豆を持って、副長室へと足を向けた。


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