銀魂 短編 弐

□しっぽがほしい*
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もし、アイツが犬みたいになついてきたら、どうする?

真っ白でふわふわの毛並みに、太くて大きいしっぽ、高さが軽く2メートルほどある巨大犬――定春と戯れる少女を眺め、妄想にふける俺。

俺たち二人は今まで“犬猿の仲”として数々の死闘を繰り広げてきた。

しかし最近恋仲となった彼女との闘いは、今となって思えば、ただの可愛いじゃれあいだ。

彼女の跳び蹴りも、彼女なりの不器用な愛情表現といえるはず。

「あ〜神楽に犬みたいな耳がついてて、犬みたいなフッサフサのしっぽがついてて、それで犬みたいに飛びついてきてくれたらなァ…」

雲に隠れていた太陽が顔を出し、ベンチにドカリと座り空を仰いでいた俺は眩しさに目を閉じた。

ポカポカとした陽気に、眠気が誘われる。

「――可愛いだろうなァ」

「何がネ」

「んあ?そりゃあ……って、お前!なんでィその耳!?」

目を開けた先にあったのは、白い犬耳とフサフサしっぽがついた神楽の姿――俺の妄想通りに変化した可愛すぎる彼女がいたのだ。

驚きのあまり目を見開いて、彼女の姿を上から下へしっかりと確認するように見ていく。

当の本人は不思議そうにこちらを見返していた。

「お前、知らなかったアルカ?実は、夜兎族は日に当たってると普段は隠れてる耳としっぽが出てくるアル」

「いや知らねぇよ、そんな性質!」

「地球での日光に慣れて、たまに傘さしてなかったからナ。ちゃんと傘ささないと…」

「マ…マジかよ…」

まさか、彼女にこんな性質があったなんて…信じられない。

じゃあ、アレか?あのバーコード親父も、日に当たったらこんなキュートな耳が生えてく――いや、想像すんのはやめよう。

神楽は、藤色の番傘をしっかりさして、似通った耳としっぽを持つ定春を撫でている。

それをじっと見つめていた俺に気づいて、彼女は傘をさしたまま俺の隣に腰かけた。

「笑わないアルカ?」

「何を?」

「何って…これヨ」

自身の犬耳に触れて、彼女は小さな声で言った。

傘からのぞく彼女の顔は、少し赤らんでいるように見えた。恥ずかしがっているのだろうか。

その姿が可愛くて、俺は思わず目を背く。

「笑わねェよ。だって可愛いし…」

「はあ!?」

(ついさっきまで妄想してたし…)

率直な俺の言葉にさらに顔を真っ赤にした彼女が、こちらを向いてあたふたしている。

俺はにやけてしまいそうな口元を引き締め、彼女に向かって静かに尋ねた。

「なァ…それ、触っていい?」

「え?別に、いいけど…」

「じゃあ遠慮なく」

「ぅあっ…くすぐったいアル…」

クスクス笑いながらときどき身をよじる彼女に気を良くした俺は、ふと妄想上の彼女を思い起こして、フサフサと揺れるしっぽに目をやった。

猫なんかがしっぽを触られるのを嫌うというのは、実はしっぽは性感体じゃないか、と俺は思うのだ。(注:これは沖田総悟くんの考えです)

とすれば犬のしっぽも同じで、妄想上の神楽はしっぽを触られて感じてしまうわけだから…(注:沖田総悟くんは変態です)

現実の神楽のしっぽも、性感体である!という結論に至るわけだ。

そこで触らないわけにはいかない。

フサフサと揺らされるしっぽを俺は掴むようにして撫で上げた。

「ひゃあっ!」

案の定漏れた彼女の甲高い声に、俺はニヤリと口角をつり上げた。



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