カカシ 短編
□一番綺麗な星
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『星を見ているとね…
自分がすごくちっぽけな存在に感じて、
今、悩んでいることなんて、どうでもよくなってしまうんだ――』
そんなドラマみたいな台詞を、彼女は藍色に澄んだ夜空を見上げて唐突に言うものだから、こちらとしてはつい驚いてしまう。
「くさい台詞でしょう?でも、確かにそうなの」
そう言って笑う彼女があまりにも綺麗で、儚くて、消えてしまいそうで――
俺は何も言わずにそっと彼女を抱きしめた。
情けないことに俺は泣きそうになっていて、彼女の肩に顔をうずめる。
ふわりと香る愛しい香りに、心が満たされていくようだった。
ふと、彼女の手が俺の髪に触れた。
「大丈夫。私がここにいるから」
ぽんぽん、と頭を撫でながら、彼女は言った。
「悩むことないよ。あなたは里を守ったの。私も同じ。何かを守るために、犠牲が生まれるのは、今の世の中仕方のないことなんだよ。
それに、彼らも里のためにと戦って死ねたなら、きっとそれは忍として本望だと思うよ」
彼女はじっと夜空を見上げて、背にいる俺にそう言った。
こんなに細くて、小さくて、綺麗な彼女が、里のためにその手を血で染める一流の忍であるということは、今でもたまに信じられなくなる。
「いつか、こんな世の中が変わる日が来るのかなぁ…」
彼女は、呟く。少しだけ、悔しさを滲ませながら。
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