銀魂 短編


□充電中
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「――あぁ、わかんねェ」

シャーペンを机に放り、彼は背中を床に倒した。

頭の下で腕を組み、天井を見つめる瞳はひどく疲れた様子で、今にも閉じてしまいそうだ。

無理もない。

分厚い問題集と参考書を照らし合わせ、ひっきりなしに手を動かし続けてもう2時間を過ぎた。

彼の集中力はたいしたものだったが、疲れが溜まったところで難題にぶつかれば、さすがにやる気も途絶えるはずだ。

「明日は、英語と物理。で、明後日は…」

「地理と数学」

英文を訳しながら、私は彼に考査2日目の時間割を教える。

明日から始まる定期考査に備え、一緒に勉強しよう、と誘ったのは私だった。

要領がよく、勉強が得意な彼は人に説明するのも上手い。

そんな彼の“彼女”だというのをいいことに、いろいろ教えてもらおう、と、そうして彼の家にやってきたのだ。

「ちょっと休憩しようか」

「ああ、そうだな…」

欠伸混じりに彼は言うと、正座していた私のところへ這ってきて、太ももに頭を置いた。

さらさらとした黒髪が、私の足に流れた。

「10分」

「え?」

「10分だけ寝かせてくれ」

彼は言うなりすぐに目を閉じた。

よほど疲れていたのか、すぐに寝息をたて始める。

「…気持ちい」

子供を寝かしつけるようにそっと頭を撫でれば、指の間をすり抜ける黒髪の感触が心地よかった。

(…なんか可愛い)

普段はクールで弱味を見せない彼が、こうして甘えてくるのが珍しくて、つい私の口元が緩む。

時計を見ると、残り時間は3分だった。

あまりにあっという間で、なんだか起こすのを躊躇いたくなる。

足もさほど痺れていないし、あと5分寝かせてあげよう、と思った時だった。

あと20秒で10分になる、という時に彼はむくりと身体を起こしたのだ。

「スゴい、ぴったり…もう起きちゃったの?」

「まあな。熟睡はしてないから」

「こんなところで寝てるからだよ」

私は自分の太ももを叩いて言った。

こんな固くて高いマクラじゃあ、なかなか寝つけないだろう。

少し馬鹿にしたようにクスリと笑うと、彼は頬を染めて顔を背けた。

「いや…お前の足は…その…気持ちいいから、寝ようと思えば寝れんだけどよ…」

なぜだか恥ずかしそうに言う彼は、頭をガシガシと無造作にかきむしっていた。

「じゃあ寝てれば良かったのに。私、起こしてあげるからさ」

「いや、もう大丈夫だ。勉強しなきゃな、勉強…」

シャーペンをくるりと指先で回し、彼は問題集に向かった。

黙々と、計算式が綴られていく。

一度伸びをした後、私も問題に向かった。

「ねぇトシ、これ教えて」

「あ?どれだ?」

問題を見てすぐに、彼は私に淡々と説明をし始めた。

その横顔に、見とれてしまった。

「――オイ、聞いてんのか」

「あ、ごめん…」

「ったく、集中できねぇならお前も寝たら?」

「えっ、いやだ!だったら早く終わらせてからゆっくりする!」

「は…なんで」

「だって…」

チラリと彼の眼を見つめる。

「だって、早く終わらせたら、トシとイチャイチャできるでしょ?」

「っ!!」

恥ずかしげもなくニコリと笑って、私は言った。

テスト前ではあるが彼と戯れたかったので、素直に伝えると、「からかうな!」と真っ赤な顔で返された。

拗ねた様子でペンを動かす私の唇に、ふと彼の唇が重なった。

「あんま調子のってると、後で後悔するぞ」

身を乗り出して私の耳元で彼は低い声音で囁いた。

私はそんな彼の誘惑に動じることなく、平然と言い返す。

「大丈夫。トシは私を後悔させたりはしないから」

「……お前、いつの間にそんな余裕かませるようになったんだ?」

バツが悪いような苦い表情を浮かべて、彼は諦めたのかやりかけの問題に目を落す。

その様子が可笑しくて、笑いそうになってしまうのを必死でこらえた。

私は手元にあった付箋に文字を書き、無言で彼の問題集にぺたりと貼り付けた。

「――っ!」

一瞬顔を強張らせこちらに目を向けた彼に、私は語らずに微笑む。

ややあって彼はニヤリと悪戯な笑みを浮かべて返した。

二人の間に貼られた付箋に書いてあるたった一言。

それを果すために、お互い問題にかじりつき、少しだけすっきりした頭をフル稼働させるのだった。


なんて不純な動機だろう。


素直で、可笑しくて、二人で笑った。


終わったら、お膝においで――




充電中




end

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あれ、終わったけど文章意味不明…
要するに、「勉強終わったら○○○しようね」
って話です。膝枕させたかっただけです。
膝枕して、ムラムラする土方が描きたかっただけです。
“充電中”っていうのは、膝枕で休むこと。
最後まで読んで下さってありがとうございました。


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