銀魂 短編
□魅了するモフモフ
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気に食わねぇ…
目の前で起きていることに俺は思う。
なんで…なんでこんな状況をまじまじと黙って見てなきゃいけないんですか?
「なんだよ…さっきから」
「別にー土方くんにそういう趣味があるんだなぁって」
「は?何のことだよ」
そうやって言う土方の膝には、神楽の小さな頭があった。
ソファに座った土方の太ももに横になった神楽が、要するに膝枕をしてもらっている状態で、気持ち良さそうに寝息を立てていたのだ。
「土方くんにロリコンの趣味があるとはね」
「誰がロリコンだよ!勝手にチャイナがなついてるだけだ!」
だから、それが気に食わないんだってば。
俺たちは付き合ってるはずなのに、土方ときたらいつもツンケンしてて、近づくとあの瞳孔ガン開きのその蒼い目でギロリと睨まれる。
あれ?好きなんだよね?
俺のこと好きなんだよねェ!?
そう自分に問うほどだ。
だが最近、土方は週に一日はこうして万事屋にやってきて、飯食っていったり、酒を飲んだり、テレビ見ながらぐーたらしていくようになった。
てか、俺が頼んだんだけどね。
そのほとんどの時間に新八と神楽がいる。
特に神楽は家に住み着いているから、朝だろうが夜中だろうが絶対にいる。
ちょっと前まで汚職警官だとかチンピラニコチンマヨ野郎(これ言ってたっけ?)だとか悪態を吐いていたと言うのに、今ではすっかり土方を兄のように慕い、なついていた。
土方もまだ“幼い”という域にいる神楽を可愛がっている面があったのだ。
目の前に、俺、いるんだけどね。
それが悔しくてたまらない。
「いいな〜神楽は〜」
「んだよ、嫉妬か?」
小さないびきをかいて眠る神楽の頭を撫でながら、土方は俺に向かってニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
うわっ、ウザい!果てしなくウザい!!
そして羨ましい!!
「そうですけど何か〜?彼氏の銀さんにはそんなことやせてくれないのに、あれぇ〜おっかしいな〜」
「……男の嫉妬は醜いアル…ホモが」
「あれ、神楽ちゃん?起きてるよね、今の絶対寝言じゃなかったよね。ねぇ、起きてるならさ、そこ、代わってくんない?」
「……ZZZ」
「おいィィ!狸寝入りしてんじゃねーよ!」
「うるせーな!こんなことでいちいち騒ぐなよ、鬱陶しい!」
「おまっ…“こんなこと”って!俺にとっては一大事なんだよ!ひどい!土方ひどい!俺の気も知らないで!」
プイッとそっぽを向いて、俺はソファに横になるなり目を閉じた。
あーあ、俺、こんなに女々しかったっけ?
どうにも眠れず目だけ閉じていると、背後からぼそりと土方の声が聞こえた。
「こんなこと…恥ずかしくて出来るわけねーだろ…」
「え?今何て?」
「うわっ!てめぇ起きてたのか!?」
――なーんだそういうことか。やっぱりコイツ超可愛い。
顔を真っ赤にした土方を見て俺は思った。
「神楽ァ、今日の夜は新八ん家泊まってこい。なんか、夕飯すき焼きらしいぜ」
「マジでか!行くアルゥゥゥ!!」
さてと、邪魔者はいなくなった。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべた俺に、土方は少しだけ顔を強ばらせるのだった。
「土方くーん…お願いがあるんだけど――」
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