銀魂 短編


□とろける
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これはある夏の日のはなし。

ただひたすらにじりじりと光を降り注ぐ太陽を憎らしく思いながら、俺は堅苦しい真っ黒な隊服を脱ぎ捨てた。

太陽の光を遮る雲など一つも浮かんでいない、真っ青な空にはこの連日見飽きた。

風が吹いたかと思えば、それは湿気を含んだ生暖かい空気を運ぶだけ。

「暑ィ……」

この国の人が今一番口にしているであろう言葉。

これで何回目だろうか。

『“暑い”って言うから暑いんだ!だから“暑い”って言うな!』

なーんて言われても、暑いんだから仕方ない。

「マジで暑い…」

こうも暑くちゃ、昼寝しようにも寝られない。

仕事しようにも、やる気が失せる(元々ないけど)。

とりあえず畳の上に横になって目を閉じてみたものの、やはり暑さは変わることなく、額と背中に滲んだ汗が気持ち悪かった。

「一部屋一台、クーラー配置してくんねェかなァ」

「そんな金ねぇよ、贅沢言うな」

「あ?」

声がしたほうへ目を向けると、案の定そこにいたのは土方さんで、手には食べかけのアイスキャンディが握られていた。

「アンタにしちゃ珍しいもん食ってんじゃねぇですかィ。俺にもくだせェ」

「自分で買ってこい」

「チッ、気の利かねェ人だな」

「てめぇ何様だよ」

「俺様」

なんていやらしい野郎だ。

この暑い時にアイスなんて最高じゃねーか。

わざわざ見せびらかしにきたなんて、大人げねェ。

「買ってこなくていいのかー」

「暑いんでィ。土方さん行ってきてくだせェ」

あぁぁ、苛々する!ムカつく!

なんでィその勝ち誇ったような気持ち悪い笑みは。

さっさと食えよ、見せびらかしてないで!溶けてんだろィ!

その時、土方さんの手に溶けたアイスが落ちそうになって、彼は咄嗟にそれを舐めとった。

暑さに負けてどんどん溶けていくアイスキャンディーを舐める仕草に俺は顔を赤らめた。

(うわ…エロッ…)

固まっている俺に、急いでアイスキャンディーを食べ終えた土方さんが、こちらを向いた。

「どうした、総悟。オイ、顔赤いぞ?大丈夫か?」

そう言って俺に近づいて頬に手を添えるので、俺は恥ずかしさのあまりバッ!と土方さんを振り払って、逃げた。

「っ!…なんでもないでさァ!この変態土方ァ!」

顔が熱いのは、夏のせいだ。

断じて土方さんのアイスを舐める仕草がエロくてドキッとして、そんでもって見とれたから、とかじゃねェ!




「…ちょっと意地悪しすぎたか?」

自覚のない土方は、そう思って総悟のために渋々アイスを買いに行った。

その優しさが、また総悟をときめかせてしまうことは、本人が知るよしもない。




とろける




「総悟、パピコ半分こしねーか?」

「っ!!アンタ、いい加減にしろィ!」

「え?なんで!?」

(半分こって…!なに可愛いこと言ってんでィ!この色男が!)

顔が熱いのは、恋のせい。


end


→ていう話を、夏のうちに書きたかった。
あれ、もう真冬…

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