銀魂 短編
□線香花火
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二人同時に火薬の入っている部分をライターの火に垂らし、火がついた線香花火を揺らさないように慎重に扱う。
「…土方さん」
「なんだよ、今集中してんだ。話しかけんな」
「あらら、余裕ないですねぇ」
「あ?んだとっ」
その時、土方の線香花火は虚しく光を失った。
集中力に絶対の自信があった土方は、すぐに彼女を責め立てる。
「お前のせいだ」
「話しかけちゃいけないなんてルールはありませんよ?――あ、落ちちゃった」
咲夜の線香花火の火が落ちたところを見つめ、土方は新しい線香花火を二本手に取った。
「もう一回だ。次で勝敗を決める」
「なに言ってんですか。潔く負けを認めてくださいよ」
「今の勝負が本番だとは誰も言ってねぇぞ」
「うわっ、小学生ですかアンタは」
「うるせェ!お前も似たようなもんだろうが!」
無理矢理に線香花火を押し付けられて「仕方ないなぁ」と言いながら咲夜は“本番”勝負にのった。
さっきと同じように火をつけ、それを見つめる。
「土方さん」
「…………」
「無視ですか」
「…………」
「土方さっ――」
「好きだ」
「!?」
『好きだ』
土方がそう言った刹那、咲夜の線香花火の光は小さいまま地面に落ちた。
だが土方の線香花火はまだ続いている。
呆気にとられていた咲夜はゆっくりと顔をあげ土方を見た。
彼はニヤリと笑って勝ち誇ったように言った。
「俺の勝ちだな」
「…ずるい」
ボソリと呟く咲夜の顔はほんのりと赤かった。
それを見て、土方はまたフッと笑う。
「俺はお前が言ったルール通りに勝負しただけだ。だから――」
ずい、と寄ってきた顔に咲夜は身を退いた。
土方は彼女の頬に手をやって、顔を向けさせ言う。
「潔く俺の言うことをきくんだな」
「…いいですよ。言い出したのは私ですから。あんま無茶なのはナシで」
若干ひきつった笑みを浮かべ強気な言葉を返す咲夜だが、膝に置いた手は小さく震えている。
土方は彼女の顎をつかんで、くい、と少し上に向かせた。
「じゃあ、俺とキスしろ」
低い声音で囁いてから、土方はそっと彼女に口付けた。
優しかった口付けも次第に荒々しくなり、彼は無理矢理彼女の唇を割って口内に舌を侵入させる。
小さく声を漏らしながら、咲夜は彼の舌を受け入れた。
「んっ…ふ…」
静かな秋の夜に、二人の甘い吐息が響く。
ひんやりと吹く風が、火照った身体に心地よかった。
名残惜しげに離れた唇の間には銀糸が伝って、咲夜はそれを拭いながら小さく呟くのだった。
「まだ、夏…終わってなかった」
だって、こんなに熱いんだもの――
線香花火
end
ほのぼのでした。
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