銀魂 短編


□線香花火
2ページ/2ページ


二人同時に火薬の入っている部分をライターの火に垂らし、火がついた線香花火を揺らさないように慎重に扱う。

「…土方さん」

「なんだよ、今集中してんだ。話しかけんな」

「あらら、余裕ないですねぇ」

「あ?んだとっ」

その時、土方の線香花火は虚しく光を失った。

集中力に絶対の自信があった土方は、すぐに彼女を責め立てる。

「お前のせいだ」

「話しかけちゃいけないなんてルールはありませんよ?――あ、落ちちゃった」

咲夜の線香花火の火が落ちたところを見つめ、土方は新しい線香花火を二本手に取った。

「もう一回だ。次で勝敗を決める」

「なに言ってんですか。潔く負けを認めてくださいよ」

「今の勝負が本番だとは誰も言ってねぇぞ」

「うわっ、小学生ですかアンタは」

「うるせェ!お前も似たようなもんだろうが!」

無理矢理に線香花火を押し付けられて「仕方ないなぁ」と言いながら咲夜は“本番”勝負にのった。

さっきと同じように火をつけ、それを見つめる。

「土方さん」

「…………」

「無視ですか」

「…………」

「土方さっ――」

「好きだ」

「!?」

『好きだ』

土方がそう言った刹那、咲夜の線香花火の光は小さいまま地面に落ちた。

だが土方の線香花火はまだ続いている。

呆気にとられていた咲夜はゆっくりと顔をあげ土方を見た。

彼はニヤリと笑って勝ち誇ったように言った。

「俺の勝ちだな」

「…ずるい」

ボソリと呟く咲夜の顔はほんのりと赤かった。

それを見て、土方はまたフッと笑う。

「俺はお前が言ったルール通りに勝負しただけだ。だから――」

ずい、と寄ってきた顔に咲夜は身を退いた。

土方は彼女の頬に手をやって、顔を向けさせ言う。

「潔く俺の言うことをきくんだな」

「…いいですよ。言い出したのは私ですから。あんま無茶なのはナシで」

若干ひきつった笑みを浮かべ強気な言葉を返す咲夜だが、膝に置いた手は小さく震えている。

土方は彼女の顎をつかんで、くい、と少し上に向かせた。

「じゃあ、俺とキスしろ」

低い声音で囁いてから、土方はそっと彼女に口付けた。

優しかった口付けも次第に荒々しくなり、彼は無理矢理彼女の唇を割って口内に舌を侵入させる。

小さく声を漏らしながら、咲夜は彼の舌を受け入れた。

「んっ…ふ…」

静かな秋の夜に、二人の甘い吐息が響く。

ひんやりと吹く風が、火照った身体に心地よかった。

名残惜しげに離れた唇の間には銀糸が伝って、咲夜はそれを拭いながら小さく呟くのだった。

「まだ、夏…終わってなかった」


だって、こんなに熱いんだもの――




線香花火




end

ほのぼのでした。

目次に戻る

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ