銀魂 連載
□恋する銀時くん
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新八が発した言葉の中に、気になる人物の名前が上がって、俺はふと顔をあげた。
「あ?和葉に会った?どこで?」
「だからライブ会場ですよ!昨日のお通ちゃんのライブ会場に、和葉さんがいたんですよ!なんか、アイドルが好きみたいですよ」
新八が、妙に嬉しそうに言う。
ちょっと腹が立った。
なんで新八がアイツに出会うんだよ、と。
「意外だな…今度俺も行ってみようかな…」
「銀ちゃんまでオタクになるアルカ?お通ちゃんに会いに行くために変な踊りとか覚えるアルカ?」
「ちげーよ、俺が見に行くのは和葉だけだ」
「あの、銀さんまでストーカーにならないでくださいよ?」
お茶を差し出しながら、新八が心配したように言う。
心配いらねェ。俺はどっかのゴリラやメス豚みたいにはならない自信がある。
「そんなに和葉に会いたいなら、真選組に行けばいいアル」
「バッカヤロー、あんなとこ行ってマヨにでも出くわしてみろ。胸クソ悪ィ」
「てか、銀さん本当ですか?」
「何が?」
「この間、銀ちゃんが風呂場で呟いてるの聞いたアル」
言われてゾッとした。
まさかあの独り言が、神楽に聞こえていたなんて…
――俺、和葉のこと…好きかも。
ある日の晩、風呂に浸かりながらポツリと溢れた言葉。
俺は和葉のことが気になっていた。
彼女に会った時から、ずっと。
ふとした時に彼女の顔が浮かんできて、その度に思う。
“会いたい”って。
「そんなに和葉のこと好きアルカ?」
神楽に聞かれたから、俺は素直に答えてやった。
「んだよ……悪ィか?」
「い、いや…なんかその。ビックリしちゃって…まさか、和葉さんが好きだなんて…確かに、素敵な人だけど…」
「つーことだから、新八くん、今度勝手に和葉に会ったら、晩飯抜きな」
「ちょっ何ですかそれ!嫉妬ですか?嫉妬なんですか!?」
「あーもう、うるせーよウゼーよ真選組が羨ましいよ」
俺はもう何かが吹っ切れたその勢いで思っていることを並べた。
ほんと、羨ましいよ、真選組。
毎日あのクールな顔を拝めるなんてよ。
時々見せる笑顔なんてもうあれはある意味兵器だね!俺のハートをぶち抜く兵器だよ!だからね――
「重症アルナ。よっぽど気に入ってるみたいネ」
「はぁ…銀さん、最近フワフワしてますね。楽しそうで何よりですけど」
何やら冷たい視線を感じて、上の空だった俺は我に返った。
オイ、二人共なんだその目は。
やめなさい。銀さんのハートが傷つくから。
「銀ちゃん、私は銀ちゃんを応援するアルよ!
女心が知りたくなったら私に聞くヨロシ」
「銀さん、がんばってくださいね」
「あ?」
「モタモタしてたら、真選組の誰かに取られちゃいますよ?」
新八に言われて、俺は思い出した。
和葉が、初めて万事屋に来た時のことを。
『紅一点なわけじゃん?女に飢えた男たちに囲まれてるわけじゃん?襲われたり…しねーの?』
『……ありますね』
あの時の胸が高鳴るような危機感は、今でも忘れられねェ。
未遂だから大丈夫だァ?
大丈夫じゃねーんだよ。少なくとも俺は許せないの。
誰だ未遂犯した奴は!
いつかぶん殴ってやらねェと気が済まねェな。
〔その頃真選組屯所では――〕
「へっ…へっくしょん!」
「…どうした、総悟。風邪でもひいたか?」
「かもしれやせんねェ……てことで今日は休みます」
「てめっ!大袈裟なんだよ、仕事しろ!」
〔再び万事屋〕
まぁ、だいたい予測はつくけどな。
土方じゃないってことは、後は和葉に未遂犯せる奴なんて、もうアイツしかいねェだろ。
つまり今一番の強敵はアイツ――沖田くんでしょ。
「んなこたァ分かってるよ」
そう、んなこたァ分かってんだ。
だからってどうしようもねェだろ。
真選組の屯所に住み込んでんだからよ。
そうそう易々と会えねェだろうし。
つーか、俺嫌われてるかも知れないし?
とにかく、俺はアイツのことをまだ何も知らない。
焦ったってしゃあねぇだろ。
「ま、見てなさいよ。ガキの恋愛とはワケが違うからね。俺の恋愛テクで必ずアイツを落としてみせるからよ」
とか、強気なこと言ってるしかないんだよ今は。
「うおぉ!説得力は全くないけどなんかカッコいいアル!」
「ずいぶん自信満々ですね」
「へっ!ゴリにマヨにサド。あんな馬鹿共に俺が負けるかってんだよ」
「そうアル!あいつらだけには負けちゃダメアルよ銀ちゃん!」
そうそう。アイツらより俺のが断然イイ男だもんね!
ゴリはお妙にいくとして、あのニコチンマヨ野郎とドSバカに比べりゃ俺なんてもう余裕でイイ男だから!
性格だって、顔……だって余裕で勝ち組だから!
見てやがれ税金泥棒――
あ、和葉も税金泥棒だったわ。
いやでもアイツは特別だな。
いい奴だから。可愛いし――
「銀ちゃん、カムバックアル」
神楽の冷やかな一言は、虚しくも、銀時に届くことはなかった。
果たして銀時は、和葉のハートを射止めることが出来るのか!?
次回、事態は急展開!
“銀さん、和葉ちゃんと二人きりの温泉旅行に行く!の巻”
近日公開!!
「…いや何勝手なこと言ってんですか!やりませんよ、そんなの!」
「次回は、“神楽ちゃん、モテ期到来!の巻”アル!」
「いやそれもやらねェェェ!」
〔真選組屯所にて〕
「次回、“和葉ちゃん、真選組の皆を奴隷にする!の巻”絶対読んでね」(和葉)
「誰が読むかァァァ!」(土方)
つづく
次回、本当に急展開?
“土方くんと和葉ちゃん、デートする!の巻”
お楽しみに。