銀魂 連載
□海に行こう
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「夏だ!」
「海だ!」
「お妙さんだァァァ!」
「どっから沸いてきたゴリラぁぁぁ!!」
ゴッと鈍い音をたて、近藤の頭に大きなスイカがクリティカルヒットした。
スイカを投げたのは、言うまでもなく彼にストーカー被害を受けている志村妙だ。
「てめぇはどっから嗅ぎ付けてきやがった!さっさと海に沈めェェェ!!」
「ハァ…」
蹴りを入れられ海に突き出された近藤を見て、浜辺に座る土方は盛大にため息を吐き出した。
近藤が海に行く目的は、お妙以外に考えられなかったからだ。
彼の不純な動機に、呆れるしかない。
「ったく、なんかおかしいと思ったらやっぱりか」
「まったく、局長の姐さんへの執着がこんなに強かったなんて」
「それは今に分かったことじゃねーだろ。それよりなんで俺たちまで来る必要があったんだ?」
隣で準備運動をする海パン姿の山崎に土方は言う。
ストーカーなら勝手にやってくれ、と憂鬱そうに煙草を加えた。
「そういや、アイツらどこ行った?」
「沖田隊長と和葉隊長なら、まだ更衣室ですよ。なんか、沖田隊長が和葉隊長の水着選んだみたいで」
「なんで総悟が…」
「変な水着着させられてなきゃいいんですけど…じゃ、俺は海に沈みかけてる局長を救助しに行くんで」
瀕死状態で海に浮かぶ近藤を見ながら言って、山崎は白い砂浜の上を勢いよく駆けていった。
ジリジリと照りつける太陽、白い砂浜、青い海。
夏の風物詩ともいえる海水浴だが、正直何が楽しいのか、土方には理解し難い。
「どいつもこいつも呑気なこった」
江戸を放置して来ているというのに。
危機感の欠片もなく海を前にして浮かれている。
「おまけにこんなクソ暑いのに俺を狙ってくるバカがいるし」
「何言ってんですかィ、スイカ割りですよスイカ割り。こんなところに土方さんそっくりのスイカがありまさァ」
「そうか。俺には総悟そっくりのスイカしか見えねぇなァァァっ!」
背後で棒を構えていた沖田に、土方は殴りかかる。
沖田はそれを華麗に避けながら、時に棒を振り回した。
「スイカ割りィィィ」
「うおわっ!」
対峙していた二人だったが、いきなり土方の背後からもう一本の棒が振り落とされる。
間一髪のところで、土方はそれを避けた。
背後から棒を振ったのは、和葉だった。
「なっ、何すんだてめェ!!」
「チッ…外したか…」
「外したかじゃねーだろ!お前らも海に沈みてェのか!」
土方は沖田と和葉を交互に睨みながら息を乱す。
そしてふと、和葉の姿が目に止まった。
「…案外普通の水着じゃねぇか」
シンプルな黒いホルダーネックのビキニ姿に、土方は安堵する。
それと同時に、不覚にも目を奪われた。
「何でィ土方さん、もっとえげつない水着がよかったんですかィ?アンタにそういう趣味があるなんて残念極まりないですねェ」
「お前に言われたくないわ!」
「やらしいんだよ、死ね土方」
「だから違うっつってんだろ!お前が死ね竜崎!」
「オイオイ、トシ、和葉ちゃんまでせっかく水着着て楽しもうって時に、そうカリカリするな」
いつの間にか山崎に救出されていた近藤が、顔を真っ赤にして怒る土方を抑える。
沖田と和葉に、あんまりトシを苛めるなよ、と痣だらけの顔の近藤が促すと、二人は渋々棒を手放した。
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