銀魂 連載


□土方撲滅同盟
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「お前なぁ、総悟に便乗してどうする。お前までオレの命を狙う気か」

副長室に書類を届けに来た和葉に、土方は呆れて言う。

昨夜のことを、強く言っているようだ。

「私は副長の座なんて興味ないんで、命を狙おうとは思いませんが」

「じゃあ、なんでわざわざあんな夜中に…」

「だって…」

和葉はニコリと笑って言う。

「面白そうだったんだもの」

「………いや、だものじゃなくて……」

その笑みに土方を顔を引きつらせる。

彼女は確実にSっ気があると見込んでいた土方だったが、沖田の影響で、日々悪化している気がする。

「お前、慣れてきたのか知らねぇが、最近俺に対して態度がでけーんだよ」

「そんなことないですよ。別に、十一番隊隊長とか言いながら実は兼副長の雑務係をやらされて、
ちょっとイラついてるとか、マヨネーズを大量に買うのが恥ずかしいとか、そういうんじゃなくてっ」

「思いっきり妬んでんじゃねーか!明らかにその不満が表に出てんだろうが!」

声を荒げる土方に、まあまあ、と和葉は特に慌てる様子もなく言う。

この人はつくづく沸点の低い人だな、と思った。

「そんなに俺が嫌いか?」

「嫌ってるのは土方さんでしょ」

「別に…嫌ってねぇよ。そりゃ初めは女のお前を是が非でも認めねぇ、なんてガキみたいなこと言ってたが、今じゃいろいろ助かってんだ…」

土方は少し恥じらいながら言う。

それが彼の本音だったから。

しかしそれを温かく受け止められないのが和葉であって――

「なんですか急に真面目な話して…マヨが頭に回ったんですか?」

「んだよ、悪いかよ真面目な話して!せっかく人が素直になってるってのにお前はどんだけ捻くれたら気が済むんだよ!」

「すいません、もう帰っていいですか?」

「ああ帰れ!さっさと帰れ!もういい、やっぱおまえは認めねーわ!」

「失礼しまーす」

「二度と来るなァァァ!」

カタン、と閉まった襖の向こうを睨んで、土方は新に煙草をくわえた。

ため息とともに煙を吐き出すと、沖田と和葉についてふと考える。

(あの二人、妙に一緒にいるな…)

歳も近いし、趣味も合う。

沖田は和葉を気に入っているようだった。

彼が珍しく女に興味を持つので不思議だったのだ。



『あ、実は今、噂になってるんスよ。沖田隊長と和葉隊長がデキてんじゃないかって』

以前、山崎がそんな噂話を持ってきたことがある。

『ほら、あの二人、いつも一緒にいるし。あのドSな沖田隊長が、和葉隊長にだけは妙に優しいし…』

あ、でも、と山崎は付け足す。

『副長とデキてるって噂もあるんですよ?』

『は?』

煙草を持つ手が、口に運ばれようとして止まった。

沖田と和葉のカップリングはなんとなく分かるが、自分との噂をされているとは思いもしなかった。

だって、嫌われていると思っていたから。

『今じゃ、沖田派と土方派でみんな詮索してるみたいです』

『誰だよそんな噂してんのは…仕事をしろ仕事を』

その時は所詮噂だ、と、くだらないとでもいう表情で土方は受け流した。

しかし昨夜のことといい、休憩時間を共にすることが多いといい、何かと仲良くしているので、噂も伊達ではないのかも、と秘かに思い始めていたのだ。

(あの二人に手を組まれたら、俺は確実に消される…)

ニヤリと笑う二人の姿を想像すると心臓に悪かった。

嫌な汗が出てきそうになる。

「ひーじーかーたーさーん」

「あ?」

想像していた和葉の声が、外から聞こえた。

いつもなら半ば勝手に部屋に入ってくるのに、二度と来るな、という言葉を真に受けたのか、律儀に返事があるまで彼女は外にいた。

「チッ…たく、今度はなんだ」

舌打ち混じりに土方は言うと、そっと襖を開ける。

そこには重たそうにふくらんだビニール袋を二つ手に持っている和葉が立っていた。

「何の用だ」

「マヨネーズ…確かもうすぐ切れるはずだったので、買ってきました」

淡々と言って、マヨネーズしか入っていないビニール袋を一つ、土方に手渡した。

「後は、調理場の冷蔵庫に入れとくんで」

そう言って、和葉は去っていった。

「爆弾とか…仕掛けてねえだろうな…」

彼女に聞こえないくらい小さな声で土方は袋の中やら裏やらを見た。

また何か嫌がらせを仕込まれているのでは、と疑っていたが、ふいに彼女が振り返る。

「別に何も仕掛けてないですよ。マヨネーズを犠牲にしたら、また買いに行かなきゃいけなくなるんで」

「そんな理由かい!どんだけマヨネーズ買うの嫌なんだよ」

いや、ない。

あの女に限って、あの男に限って、恋愛感情が生まれるなんてあり得ない。

あったらあったで問題だ。

だって二人とも問題児だもの。悪戯好きだもの。

明らかに協力して俺の命狙ってくるもの!

土方はやめた。コレについて考えることを。

自分にとって、何のメリットもないと分かったから。

とにかく二人には用心しよう。

そう心に決めるのだった。


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