銀魂 連載
□ただいま
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自室に戻ると、その殺風景な景色にため息が出た。
もともと質素な部屋ではあるのだが。
だが殺風景というよりは、整っていると言ったほうがいいのか、しばらく空けていたわりに埃もたまっていなかった。
「山崎が、よく勝手に掃除してましたよ」
背後に聞こえた声に思わず肩を震わせた。
よく病室にサボりに来ていた彼だ。
「いきなり背後に現れるのやめてくれる?沖田くん」
「和葉さんこそ、しばらく休んで感覚が鈍ってんじゃないですかィ?」
彼はそう言ってニヤリと笑った。
「それで、山崎くんが掃除してくれてたって、本当?」
「ええ。誰も使わなくても埃なんかは溜まってくもんですからねェ」
「そう…後でお礼言っておかなきゃね」
さりげない山崎くんの厚意に心が温まる感じがした。
彼は本当に優しい人だ。
後で、あんぱんを贈っておこう。
「アンタが戻ってきてくれて良かった」
沖田くんが急にそう言った。
いつものように、飄々として。
「…ありがとう」
「そんな顔されたら、また襲いたくならァ」
そう言って私の肩に手をおくので、私は笑みをひきつらせた。
「…あなたは正直者ね」
「そうでしょう?」
「全く褒めてないけどね」
真選組に帰ってきたのはいいが、相変わらずこの男には今後も気を付けなければならない。
何を考えているかは分からないが、彼の様子を見て少しホッとした。
みんな、変わっていなかったから。
「しっかりしてくだせェよ。アンタは真選組の十一番隊隊長ですぜ」
私の肩をポンと叩いて、彼は去っていった。
年下だが先輩の彼に背中を押され、微かに体に残っていたわだかまりが飛んでいった気がした。
私は、竜崎和葉。
真選組の十一番隊隊長だ。
つづく