銀魂 連載


□ただいま
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「土方さん」

縁側に座って煙草を吹かす彼に、私は近寄った。

彼の様子を伺って、そっと隣に腰かけた。

「…もう戻ってきていいのか」

「いけませんでしたか」

「誰もんなこといってねーだろ」

土方さんは外を見つめながら、フーッと煙を吐き出した。

「ありがとうございました…いつも、見舞いに来てくれて」

「ついでだっつってんだろ。誰にも言ってねーだろうな?」

ここへ来て、彼が初めて私を見た。

見た、というより睨んだ、のが正しい気はするが。

入院中、彼は市中見廻りの度に、私のいる病室に顔を出していた。

特に何を話すわけでもない。

ただ、甘党の私に気遣ってか、毎回チョコレートやら飴やらいろいろな菓子を一つ置いて、
体調を確認するなりすぐに去っていった。

土方さんはその行為を誰にも言わぬようにと、私に口止めをしていた。

「他言はしてませんが、言ったとしても、誰もサボりだなんて思いませんよ」

「変な噂が立つと面倒なんだよ」

「変な噂?」

私は、おもむろに立ち上がった彼に尋ねた。

「私を泣かせたってことですか?」

「それは、お前が勝手に泣いたんだろうが!俺は何にも…」

「そういえば思いましたけど、土方さんって、風貌には似つかず意外と優しいんですね」

「うるせぇ、変なこといきなり言うんじゃねーよ」

彼は少し照れたようにそう言った気がする。

そして逃げるように廊下を歩いていった。

「素直じゃないですねぇ」

その呟きが聞こえたのか、彼は一瞬私を睨んで去って行った。

土方十四郎。

彼の性格が、少しだけ分かったような気がする。


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