銀魂 連載


□悪魔になった日
3ページ/5ページ

「よぉ、久しぶりだなぁ」

市中見廻りに出かけてすぐ、歌舞伎町の路地裏でそう声がした。

「どちら様?」

私は暗いその路地裏に向かって、小さく言った。

いかにも怪しい奴らが溜まっていそうなその場所から、案の定、人相の悪い男が現れた。

彼の後ろには、三人ほど、同じく人相の悪い、いかにも“馬鹿”そうな男がいた。

「オイ、てめぇ何黙ってんだよ」

「用件はなんでしょう」

「あ?」

平然とした様子でいれば、それが癪に触ったのか、男たちは顔を強ばらせた。

「てめぇ…まさか俺たちを忘れたわけじゃねーよな?」

「…誰?」

「誰じゃねーよ!!沌吉(とんきち)だ!」

「とんてき?」

「うまそうだな。じゃねーよ!沌吉だ!と・ん・き・ち!」

「はいはい、もういいから。そんな変な名前何回も聞かなくても分かるから、とんかつ君」

「分かってねえじゃねえか!!ふざけてんのか、てめぇ!」

うるさい男だ。

名前なんてどうでもいい。

お前みたいな男に、興味はない。

公務執行妨害及び警官侮辱罪で捕まえようか、と思っていた時だった。

「っ!!紅姫ェェェ!!」

「!」

突然、男が短刀を振り回してきたので、私も仕方なく剣を抜く。

ギシリ、と刃の軋む音がした。

彼は血相を変えて、私に迫る。

「ふざけてられんのもここまでだ。紅姫さんよぉ…てめぇは自分のしたこと忘れたってのか?」

「私が、あなたたちに何かしましたか」

「俺たちの兄貴をっ!!」

男は急に引くと、懐から拳銃を取り出して、そして構え、叫んだ。

「殺しただろうがよォォォ!!」

「!」



パアンッ!!!



乾いた発砲音が響き、気づけば男たちに囲まれていた。

私はその場でひざまづき、動けずにいた。

カラン、と、刀が虚しい音を立てて、地面に転がる。

「今、即効性の麻酔薬をお前に撃ち込んだ」

銃を構えた男は、私を見下ろし、勝ち誇ったようにそう言った。

私の右腕には、弾がかすり、血が流れていた。

男が言ったように、身体が麻酔で痺れ、身動きが取れない。

かなり、強力なものだ。

「ハンデなしでお前と戦うのは、正直立場が悪い。こうしちまえば、あとは袋の鼠だ」

「くっ…!」

こんな雑魚共に捕まるとは、一生の不覚。

不気味に笑う男を、私は睨み返した。

しかし、瞼が重くなって、私が意識を失うのに、そう時間はかからなかった。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ