銀魂 連載
□悪魔になった日
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――竜崎……竜崎!
「!!」
誰かに名を呼ばれてはっとした。
珍しく、ボーッとしていたようだ、珍しく。
見ると、土方さんが鋭い目をこちらに向けていた。
あ、瞳孔が開きかかっている。
怖い怖い――
「おいっ!聞いてんのか!」
「あ…はい、すみません」
「すみませんじゃねーよ…ったく」
土方さんは煙草をくわえながら呆れて言った。
今は朝礼中だった。
こんな時に、昔のことを思い出すなんて、佐々木さんと沖田くんのせいで私は怒鳴られるハメになってしまった。
「大丈夫ですかィ?悪魔さん」
「その呼び方、やめてくれる?」
朝礼が終わった直後、沖田くんが近寄って来てそう言うので、私は嫌な顔をしてしまった。
「昨日自分で悪魔だって言ったじゃないですか」
言われて、昨日のことを思い出す。
ああいうことをしたのは久しぶりで、なんだか恥ずかしいと思ってしまう自分が嫌だった。
しかし彼は至って平然としている。
さすが、ドS王子。
「…あまり好きじゃない。そう呼ばれるのは」
「じゃあ、紅姫は?」
「それもダメ」
「じゃあメス豚」
「殺すよ?」
ぴしゃりと言うと、沖田くんは不満げに顔を歪めた。
「珍しいですね、アンタが気ぃ抜いているとこ、初めて見た気がしまさァ」
「でしょ?いつも真面目な私が気を抜くなんて」
熱でもあるのかな?と、自身の額に手を当てた。
沖田くんは白々とした目で私を一瞥してきたが、何かおかしいことを言っただろうか。
「じゃあ、市中見廻りに行ってくるよ」
私は手をひらひらと振って、その場を去った。
背後から注がれる彼の視線に、私は気がつかなかった。
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