銀魂 連載
□悪魔になった日
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「トシ、和葉ちゃん、見なかったか?」
近藤から声をかけられて、土方は不機嫌そうに返事をした。
「知らねーよ」
「和葉さんなら、市中見廻りに行きやしたぜィ。っつっても、4時間以上も前に出てったきりですがねェ」
ひょっこり現れた沖田がそう告げると、近藤は困った表情を浮かべていた。
「この書類、頼もうと思ってたんだがなぁ…何かあったのか?」
「さあな。どこで油うってんだ、アイツ…」
土方は舌打ち混じりにそういったものの、なぜだか内心、不安な気持ちでいた。
彼女は単独で力を発揮するタイプではあるが、決して真選組に対して迷惑はかけていなかった――と、思う。
「そういや、総悟。お前、最近やけにアイツと仲良くしてるよな」
「嫉妬ですかィ?」
「はぁ?」
土方は沖田をギロリと睨んだ。
「あの人、相当ヤバいですぜ」
「和葉ちゃんが、どうかしたのか?」
分からない、といった様子の近藤と土方に、沖田は平然としていながらも、いつになく心配そうに言うのだった。
「一人で苦しんでらァ」
その一言に、二人はさらに顔をしかめる。
「総悟、てめぇ何知って――」
「局長ー!!」
土方が沖田に迫ろうとした刹那、山崎が叫びながら駆け寄ってきた。
「さっき、通報があって…」
よほどの緊急事態だったのか、彼は息を大きく乱して、近藤に伝えた。
「銃声が一発。その後、真選組の隊服を着た女が、複数の男に連れ去られるところを目撃したそうです!」
「!それってまさか、和葉ちゃんか!」
「しかも、最近薬や違法武器の取引を行っている悪徳商法グループの奴らであることが分かりました」
和葉を連れ去っていったのは、最近、不法貿易を行うことで有名になった不良グループで、山崎はその密偵にあたっていた。
「和葉ちゃんは無事なのか!?」
近藤は血相を変えてそう言った。
どこぞで仕事をサボっていると思っていた土方の表情も曇る。
ただ一人、その場を駆けていく者がいた。
「総悟!どこへ行く!」
「もちろん、和葉さんのところでさァ!」
「おい待て!総悟!」
土方の叫びも虚しく、彼は勢いよく駆けていった。
「こうなったら一気に奴らを叩くぞ!総動員でのり込みだ!」
「ですが局長!まだ、奴らの勢力は図りきれていません!もし――」
「そんなことは関係ない!」
「!!」
引き止めようとした山崎に、近藤は厳しく言い放った。
「仲間が連れ去られたんだ。助けに行かなくてどうする!」
近藤の言葉に山崎が頷くと、近藤は刀を握りしめて、屯所を飛び出した。
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