カカシ 短編


□最高のプレゼント
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最高のプレゼント




「ハァ…疲れた…」

さっきから、口に出るのはこの言葉ばかり。

五日間の潜入捜査のはずが二日の延期。

計一週間もロクに休めず、体は鉛のように重かった。

そして家への足取りがいつになく重いのは、疲れたのとは別の理由で…

(怒ってるよな…)

疲れの上に恐怖までのし掛かり俺の心は今にも崩れてしまいそうだった。

久しぶりに見る自宅のドアの前に立ち、一呼吸してからドアノブに手をかけた。

そーっと、まるで泥棒みたいに恐る恐るドアを引き、部屋に足を踏み入れた時だった。

「カカシ先輩〜!ハッピーバースデーイ!」

パンッと乾いたクラッカーの音に驚き固まる俺の目の前には、満面の笑みでそう言う愛しい人の姿があった。

「って、昨日したかったのに……」

「ルミ…」

しゅんとなって、不満げに俯く彼女に、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「任務は五日間って言ってたのに……バカ」

「ごめん!本当にごめん!」

情けないくらいに頭を下げ、なんとか気を取り直してくれないかと、彼女の様子を伺った。

昨日は、俺の誕生日だった。

俺にとっては大したイベントじゃあないが、彼女にしてみればそれは一大イベントらしく、任務も差し掛からないだろうし、ささやかに二人で祝おう、と約束していたのだ。

その約束を無断で破ったのだから怒るのは無理も無い。

どう考えたって、悪いのは俺だ。

なのに…

「ごめんなさい…私、我が儘で…」

なのに彼女はひどく悲しげな顔をして、小さく言うのだった。

今にも泣きそうな彼女を、俺は咄嗟に抱きしめる。

その後のことなんて、考えていない。

「任務は何が起こるか分からない…私も忍だからちゃんと分かってる…だけど不安だった…」

震える声で彼女は懸命に言葉を繋げた。

その姿が、なんとも切なくて、愛しくて、俺は彼女を抱く腕に力を込めた。

「生きて、帰ってきてくれて、ありがとう…産まれてきてくれて、ありがとう…」

「ルミっ…」

涙を堪えてふわりと笑った彼女に、俺は思う。

俺は、幸せ者だ、と。

この瞬間、生きていることがすごく不思議に感じた。

生きていて良かった――

彼女を感じてそう思う。

「ありがとう…」

そう言って俺は、触れるだけの優しい口付けをした。

彼女が、また微笑んで言う。

「来年は…ちゃんとその日に祝えるといいですね」

「そうだな…」

「誕生日プレゼント…何が欲しいか聞いてからにしようと思って。何が、いいですか?」

「んー?そうだな…」

やっぱり、お前と“一緒にいること”だな。

今日も、彼女に出会えた。

温もりを感じた。

それが、俺にとっての最高の誕生日プレゼント。


end

Happy Birthday Kakashi...
2013/09/15

一日遅れてごめんなさい!

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