カカシ 短編


□ロスト・メモリー
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家に着いて、オレはルミにお茶を出した。

彼女は緊張しているのか、縮こまってソファに座っている。

お茶を一口飲んだ後、彼女は口を開いた。

「カカシさんは、私の先輩だそうで…」

「ああ…まあな」

「すみません、迷惑をかけてしまって」

「気にしないで。オレも、心配だからさ」

オレは、ルミに笑みを見せて言った。

彼女はひとまず安心したようで、ありがとうございます、と頭を下げた。

記憶を失っても、ルミはルミのままだった。

普段からオレに対して敬語を使っていたし、おしとやかな様子は今も変わりなかった。

記憶喪失であることを忘れてしまうほどに。

「早く、記憶を取り戻さないと…」

ルミは小さく呟いた。

少し、苦しそうな目をして。

「オレは出来る限りの協力はするよ。だから、焦らず、ゆっくり思い出せばいい」

「ありがとうございます。カカシさんって、優しいんですね」

ルミは言ってニコリと笑った。

その笑顔は、以前のルミのものとは違う気がした。

オレと過ごした記憶が、本当に消えてしまったのだと思うと、胸が締め付けられるような切なさが込み上がってくる。

けれど彼女には笑顔を振りまくしかなかった。

「ルミ」

「はい」

「これ、おまえに渡しておくよ」

そう言って、オレはルミに家の鍵を渡した。

「ずっとここに閉じこもっていても、記憶を取り戻す手がかりはそうないからな。気分的にも外に出たいときはあるだろうし」

正直オレの家には何もない。

ルミ自体訪れたこともあまりないのに、こんな殺風景な部屋を眺めていたってどうにもならないだろう。

ルミは小さく頷いて鍵を受け取った。

「それと、非常に申し訳ないんだが、オレもいろいろ任務を抱えててね、ずっとおまえについているわけにはいかないんだ」

「分かっています。カカシさんは、任務を優先してください」

ルミはニコリと笑った。

記憶を失っているといっても、しっかり者のルミなら大丈夫だと思った。

それでも不安のが大きかったが。

「じゃあ、早速で悪いんだが…」

オレはドアノブに手をかけて、肩越しに言った。

「任務、行ってきます…」

言うと、彼女はいきなりのことで驚いていたが、快く受け入れてくれた。

そして、オレに向かってまた笑顔を振る舞った。

「いってらっしゃい。気をつけて…」




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