カカシ 短編


□ロスト・メモリー
2ページ/7ページ



話を聞いて愕然とした。

まさか、怪我どころか記憶を失ってしまうなんて…

はたけカカシは、いつになく困惑していた。

「あたしは綱手だ。おまえ、自分の名前くらいは分かるだろう?」

「初芽ルミ…です」

「ああ、そうだ。それだけ覚えてるなら十分だ」

「十分じゃないですよ!」

カカシは綱手様に向かってついそう言ってしまった。

すると彼女は、キッと目を鋭くする。

「おまえは何でここにいる!邪魔をするなら帰れ!」

「いや…邪魔をするつもりはないのですが…」

「だったら黙って見てろ。治療中だ」

厳しく言われて、カカシは縮こまった。

綱手は記憶を失った彼女――ルミの前に座って、ゆっくりと話し始めた。

「おまえは、今までの記憶を失っている。それは、任務で崖から転落した時、頭を強く打ったからだ。
身体の傷も、その時のものだ。このことは覚えているか?」

「いえ…」

「そうか…」

「ただ…」

ルミは何か思い出した様子で、続けてこう言った。

「“悲しいときは、空を見ろ”…誰かにそう言われたのだけは覚えています」

「…!」

ルミの言ったことにカカシははっとした。

“悲しいときは空を見ろ”

それは、カカシがいつか彼女に言ったことだから。

カカシは思い詰めたように俯いた。

「カカシ」

「はい」

「ルミは、おまえに預ける」

「はい……え?」

綱手は、ルミに説明をした。

生活に慣れるまで、カカシの家に居候しろ、と。

「あの…なぜオレの家に?紅とか、女性のほうが良いのでは?」

「なんだ、何かやましいことでもするつもりか」

「いや、しませんけど…」

「だったら、後輩の面倒くらい見ろ。おまえはルミと親しいのだからな」

綱手に押し付けられて、カカシは記憶を失った後輩を引き取ることになった。




.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ