カカシ 短編
□天使と悪魔になった君
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相変わらず酒癖悪すぎでしょ。
カカシは目前で次々に酒を飲み干していくルミを見て呆れた。
以前にも同じことがあった。
その時の様子を本人に話したら、もう二度と酒は飲みたくないと言って恥じらいでいた。
あれで懲りたはずなのに、彼女はまた酒に飲まれている。
「お姉さん、ビールおかわり!さっさと持ってきな!」
空になったグラスを振って、近くにいた店員に言う。
店員は恐れたのか、震えた返事を残して駆けていった。
(チンピラみたいになってるけど…どうやって止めれば…)
普段の清楚で落ち着いた様子とは正反対の状態にあるルミを見て、カカシはため息をついた。
「私の何が悪い?言ってみなさいよ」
(完全にため口だし…)
「何かいいなさいよ!」
「分かった!分かったから投げるな!枝豆の皮を投げるな!」
カカシはルミの腕を握って、とりあえず落ち着かせる。
素直に彼女の言うことに従っていないと、面倒だ。
「さあ、私の悪いところは?先輩なんだし、遠慮なく言いな」
そう言われても。
カカシは内心戸惑いながら、仕方なく口を開いた。
「特にない…かな…」
「…………あ゛?」
「っ……じゃあ、強いて言おう!」
「?」
鋭い視線とは目を合わせずに、カカシは言う。
なるべく、ルミの気を損ねさせないように。
「おまえの理想が高すぎるんじゃないか?」
「理想…?」
ルミは分からないといった様子で顔をしかめた。
「おまえ、なんだかんだ言っても、いろんな奴に告白されてるでしょ。でも、全部断ってる」
ルミは自覚していないだけで、実は結構モテる。
顔もスタイルも悪くないし、性格だって穏やかで優しいし…
酒に酔うと台無しだが。
正直、カカシも気になる存在だった。
女性としては、非の打ち所がないのだ。
ただ、恋愛に関してはことごとく鈍感で、興味を示さない。
だからといって直接的に好きと言えば、あっさり断られる。
今まで何人…いや、何十人がフラれてきたのだろうか。
まさに彼女は高値の華だった。
「どんな人ならいいわけ?」
「それは…」
カカシが問うと、ルミは急に勢いをなくして俯いた。
そして小さく言う。
「カカシさんみたいな人」
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