カカシ 短編
□ふたつの恋歌
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――ありがとう
ナルトたちにそう言った彼女の笑みは、心からの喜びに満ちていた。
里に忍び込んだスパイだということを忘れてしまうほど、美しい彼女に見とれた。
嫉妬しなかった。といえばもちろん嘘になる。
けれど私はそれよりも、彼女はそんな悪人には見えなくて、彼女のどこか切ない表情が気になっていた。
だから、二人の邪魔はしないことにした。
カカシさんなら、彼女を“救える”と思ったから。
口布越しのキスを目撃したって、私の知らない二人の過去があったって、我慢できる気がした。
実際に私はカカシさんと付き合っているわけでもないのだから、二人を引き裂く権利なんてない。
悔しいけれど、そっと見守ることにした。
カカシさんを信じて…