カカシ 短編


□クリスマスが本番だから
1ページ/5ページ

12月24日。

クリスマスイブと呼ばれるこの日、街はきらめきを放ち、人々で賑わう。

しかし私にとっては、イブもクリスマスもただの平日に過ぎない。

毎年毎年、クリスマスに任務が重なり、里にいることすらあまりなかった。

ましてや恋人と過ごすなんて経験はしたこともない。

決して見栄を張っているわけではないが、別にそれが悲しいと思ったことは一度もない。

「任務もないし…今日一日どうしようかな…」

夕食の食材を買うためいつになく賑わう商店街をぶらつきながら、一人暇をもて余していた。

「お!ルミじゃねぇか」

後ろから呼ばれて振り向くと、そこには二人仲良く並んでいるアスマと紅の姿があった。

「アスマさん、デートですか?」

「ちょっとぶらついてただけだよ」

アスマは頬を染めてぶっきらぼうに煙草を吹かしながら言った。

「ルミ、アンタこんなところで何してるのよ?」

「ちょっと買い物に」

「一人で?」

「ええ」

「……………」

アスマと紅が顔を見合わせて、呆れ顔でため息をもらした。

「お前…なんか予定とかないのか?」

「ありますけど…」

「なんだ、教えてくれよ」

アスマと紅が期待の目を向ける。

私はその期待にこたえて、にこやかに今日の予定を話した。

「今日は久しぶりに新作の兵糧丸を作ろうかなって…丁度材料も買ったとこですし」

「「は?」」

「あ、あとひなたに当たって、お茶を飲みながらゆったり読書でもしようかと………て、どうしたんですか?」

ルミが見ると、二人して頭を抱え、もうだめだの悲しいだのと言いながら、さらに大きなため息を吐き出した。

「あのなぁ…お前…独り身の老人じゃねぇんだからよ。
クリスマスくらい誰かと派手に過ごせよ!」

アスマが新しい煙草をに火をつけながら、顔をひきつらせた。

隣では紅がうんうんとアスマの言葉に頷いている。

「任務のない日は、一人でリラックスすることが必要なんです」

「とは言ってもな…明日も休みなんだろ?今日だけでも遊んでハメはずせって」

「そう言われても…」

アスマと紅はいかにも心配そうに迫るが、別に一人でクリスマスイブを過ごすことにルミはそう困ってなどいないのだ。

むしろ、一人でやりたいことは山ほどある。

「カカシは何してんのよ?たしか今日は非番でしょ?」

「さぁ…私は知りませんけど…休みだとしても、カカシさんにはきっと予定があるでしょう」

カカシの遊び相手なんて、たくさんいるだろう。

別に、私が一緒にいる必要も意味もない。

ルミはどこか虚しい思いになりながら、カカシの顔を浮かべた。

「お前も素直じゃねぇな」

「すみませんね、ひねくれ者で」

ルミは苦笑いを作った。

これ以上、先輩カップルにお節介をやかれては困る。

「さ、せっかくのデートなんですから、二人きりでごゆっくり」

ルミはそう言って、逃げるように去っていった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ