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□secretX松樹
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※モブ女視点
菊華様と松樹くんは仲が良い。
それはクラスだけでなく普通科全体での周知事項だ。
美形で歌舞伎役者で弟で国内トップクラスの頭で。共通点なんて探そうと思えばいくらでも探せれる。
が、
「仲良すぎじゃない?」
「そうかな?」
なんとなくだが普段から二人とも互い以外の人と一歩距離を置こうとしている。
それも相まってやけに仲が深すぎるように見えるのだ。
「確かに距離感はあるけど……家柄が家柄だし、そんなもんじゃない?」
「そっか……。」
納得したフリをするが消化しきれないモヤモヤ感が残った。
* * *
忘れ物をしたなんて最悪だ。
そのまま置いて帰りたいところだが明日提出のノートとは運が悪い。
もう生徒は一人もおらず、たまに先生とすれ違うくらいだ。
教室に入る直前、窓から中が見えた。
例の二人だ。こんな時間まで勉強でもしてるのだろうか。
なんとなく入りづらい雰囲気にドアから手を離すと、私は目にしてしまった。
夕日が差し込む教室の一角で松樹くんの額に口づけをした菊華様。
愛しいものへ向けた視線を恋と言わずしてなんと呼ぶのだろう。
私と目が合った瞬間、彼ではなく私の方が動揺した。彼は優しく唇に孤を描き、その前に人差し指を立てる。
あまりの綺麗さにたどたどしい頷きになり、その場にいたらいけない気がしてノートなんかどうでもよく玄関へ走った。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
明日からどんな風にふたりを見ればいいんだろう。
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