□腹筋話x清良
1ページ/2ページ


「仙くんって良い身体してるよね。」

稽古の休憩中、菊華は汗を拭う仙の傍に寄る。自然と他の人達も集まってきた。

「俺らの中で一番筋肉あるしな。」
「腹筋とかすげえし。」
「……触ってもいい?」
「え、うん。いいけど。」

菊華は了承を得て、少し興奮気味に手を伸ばす。
顔と性格に合わず筋肉隆々な身体は、服の上からでもわかった。

「……凄いなぁ。」

腹筋は割れてる、体幹も優れてる、一朝一夕で身につけられるものではない。

「菊華ちゃんもかなり鍛えてるよね。」
「まぁね。座長によっちゃあ無茶ぶりな演出するからね。」
「でも全然筋肉ついてねえよな。」
「ついてますよ!見えないだけで!」

珍しくTシャツ姿の菊華は片方の袖を肩までまくりあげ、二の腕を晒した。
本人は筋肉があると言い張っているが女性特有の体質には勝てるわけない。

「ないな。」
「ない。」
「分かんない……。」
「!!じゃあ腹筋は……、」
『やめろおお!!』

裾を持ち上げるその手を止められる。
さすがに男だらけのこの状況でそれはやばいと察したのだろう。
だが全く持って理解できない菊華は馬鹿にされたのだと勘違いし頬をふくらませた。

「何してるの。」
「清良さん!」

助け舟、と清良の方へ駆け彼らの方へ指を差す。

「ひどいんですよ!私には筋肉がないって馬鹿にするんです!」
「……ふうん。」

目を細める清良にしてやったりと思う菊華。が、数秒後には背を清良の胸に貼り付け、片腕で抱きかかえればなくなる逃げ場。
予想だにしなかった展開に多めに瞬きをした。

「ひゃっ!」

Tシャツの下から簡単に侵入した手はあらぬところをまさぐり始めた。
菊華は悲鳴にも似た声を出した後、唇を噛んで鼻にかかる甘露な響きを我慢している。
離してもらおうと腕を解こうとするが、どこからそんな力があるのかさっぱり動かない。

「こんな柔らかいくせして、よく豪語できるね。」

柔らかい、ってどこを触って言ってるんだ。
羞恥でみんなを見ることなんてできず、制止をかけようと清良に顔を向けたのが間違いだった。

「……っ!」

口内に入る異物。
それは一種の生き物かのように水音を立てながら自由に動き回る。

「……ふぅっ、」

脳みそに届かない酸素、真っ白になっていく頭。
皆というと、またかとげんなりした表情で稽古に戻るかなんて話してる。
ただ一人、新参者の仙はまだ慣れずに沸騰寸前の熱でフリーズ状態。

「ほんと、馬鹿なの?」

馬鹿はあなたでしょ。
荒い呼吸で返すことなぞできない。
清良は膝の裏に手を差し込み、そのまま持ち上げて稽古場をあとにした。



「おーい仙ー生きてっかー?」
「…………。」
「ダメだ。ぴくりともしねえ。」
「っつーか清良さん、最近稽古場で手出す回数増えてねえか?」
「確実に増えてる。こっちの身も考えてくれよ。」

主に下半身事情、なんて本人の前で言えるわけない。




→後書
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ