□まうすとぅまうす!×禄
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「禄と菊華がどうすればマウストゥマウスのキッスをできるのか考えようの会をここに開催します!」
「わ〜。」
「…………お前ら、そうゆうのは普通本人がいないところでしねえか?」

全員揃ってぽかんとした顔しやがって。
ここに菊華がいないのが救いか。

「はい。」
「はい、要。」
「禄がヘタレなのが一番原因。」
「んだと!?」
「それはある〜。」
「この前だって絶好のチャンスを逃したわけだし。」
「それは、 」
「理性保てる自信がなかった、でしょ。キス一つで保てないだなんて、どれだけ性欲ゴリラなの。」
「桐矢お前は好き勝手に言いやがって!!」
「きゃー。」
「暴力はだめだよ〜。」

ここに味方なんていない。
優等生八薙でさえ話に乗っかかってる。

「そもそも何で手こずってんの。」
「キスなんてフランスじゃ挨拶みたいなものなんでしょ。」
「チェリーって向こうで卒業〜?」
「白木さん。ぶっこんでくるな。」

この面子に総出で責められると頭が痛くなってくる。

「私だって誰彼かまわず進展を急かさないよ。けど、二人はなさすぎる!こっちが心配になるの!」
「オレはおもしろそうだから〜。」
「ぼくも。」
「後ろ2人との温度差。」
「……ま、私も禄がわたわたしてるの見てて楽しいからってとこもある。」
「結局てめぇもじゃねえか。」

阿呆らしい。
すがりつく桐矢の腕を払ってドアの方へ向かった。

「帰るの?」
「付き合ってられるか。」
「じゃあ最後に。禄はしたくないの?」

イライラする。相手するのも面倒くさい。
もう半ばヤケクソだ。適当だ。

「キスしたいに決まってんだろ!」
「…………へ?」

最悪。今世紀最も悪いタイミングで入ってきた。
見計らったんじゃないかと思えるくらい。
目をぱちくりとさせてるあたりからそれはないとは分かってる。

「そうだ、私美術部に呼ばれてたんだ。」
「授業の予習しに行かなきゃ。」
「オレな〜んもな〜い。」

いつ打ち合わせしたのやら、するりするりと解散して勢いよく扉を閉められた。止める暇もなく菊華と2人きりになる。

「…………。」

気まずい。向こうはどうか分からないが、自分はとても気まずい。まともに顔なんて見れるわけがない。

「……キス、しますか?」
「………………はぁ!?」

沈黙を破ったのは耳を疑う発言であった。
こっちがテンパってるのもおかまいなしにオレの服の裾を掴んで顎をあげて目を閉じる。
これって、つまり、つまり、そういうことだよな。
緊張した手で髪を耳にかけてあげる、それだけで大げさに反応する菊華。そのまま後頭部を支え……頬に唇を落とした。
彼女はゆっくりと目を開いた。

「……お前も、女だからこんなとこじゃなくて、もっとこう……ちゃんとした場所のとこがいいだろ。」
「……。」

なんて。もちろん本心ではあるが、実際はただこっちの準備ができてないのだ。
男の自分が振り回されて断るなんて情けないのは自覚ある。

「先輩のそういうところが好きです。」

そんな自分に彼女は幻滅せず、柔らかく笑った。

「なら、お休みが重なった日にデートしましょう。」
「……は。」
「そのときにファーストキス、奪ってください。」
「〜〜〜!!!」

なんか、もう、なんなんだ。
この可愛すぎる生物をどう扱うべきなんだ。
へにゃりと恥ずかしそうにする姿が愛しくて、変にこだわっていた自分が今の自分の首を締めた。



「そこで、そこでなんでしない……!」
「本当は童貞なんじゃない〜?」
「キスすらもまだなんじゃない?」

きっと、デートもついてくる。


 

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