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□没ネタ集
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【経験】
第三十五幕【恋慕】
「こい……コイ……。」
「まだ悩んでるの?」
2人仲良く並んでの登校。
出雲は昨日、幸嶋に言われた言葉がずっと引っかかっている。
「考えて見りゃ、オレ、本気でそーゆー思い抱いたコトねぇ気がしてよ……。」
「ま、無理にするもんじゃないし。焦っても無駄でしょ。」
「そーだけどよ〜。」
「おっす。」
校門を潜った丁度その時に菅原兄弟と出会う。
おはよー今日も寒いねーなんてやりとりを菊華と彼らがするなか、出雲だけはじっと兄弟を観察する。
「どうしたメイド。」
「……2人は“恋”してる?」
『はぁ!?』
唐突なる質問に松樹までもが声を出してしまった。
「朝っぱらからなんだよ!」
「いいから。イエスかノーか。」
「言われても……、」
自然と視線が彼女へ向いてしまった。
誰よりも妙にきらきら輝いて見える……勿論、“若様”の称号の意味の輝きではない。特定の人間の、特定の感情にしか表れないきらきらだ。
彼女は彼女で、興味本位で返答を待つ。選択肢に自分というのは完全に省いて。
「例えしていたとしても、貴様には言わん。」
「はー?ずりい言い方ー。」
先に答えたのは松樹だった。
“貴様”、は会話としては出雲を指していたが視線は彼女を指す。
「好きな子いないの?」
「お前はどうなんだ。」
「いない。」
「なら、オレもいない。」
「なにそれ!」
はぐらかしてる!とプンスコする彼女を放置して靴箱へ向かうのを腕を掴んで制した。
「梅樹くんは?」
「オレか?」
話を振られた梅樹はちょっとしどろもどろになりながら言葉を探す。
「……ネコ、だな。」
「梅樹くんはそうだよね。」
「っ、……そーだよ。」
菊華の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて歩を進めはじめた。正確には“ネコみたいな奴”、である。
(……二人とも“恋”してんだな〜。)
傍から見る出雲だけが把握し寒い寒いと手袋をしていない手を擦った。
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後書
穴埋めと迷ったけど、話の繋がりからこっち