□三連×梅樹
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1.
白馬の王子様に夢を見る歳でも無いし、現実というものはしっかり理解している。
だから青少年である自分の彼氏が、そういった本を持っていようと何も気にしない、本当にね。

「…」
「…」
「…」
「…何か言ったら?」

無言のままジッと自分の膝を見つめている梅樹に声を投げると大袈裟なほど、その肩が揺れた。
「いかにも怒っています」と言いたげに脚を組み、ベッドに腰掛けペラペラと雑誌を捲っていく。
肌色の多い紙面を目に焼き付けることもなく、ただただ流していくだけだ。

「別に私は気にしてないから」
「…嘘つくなよ。じゃあなんで怒って」
「だから怒ってないってば、勝手に正座したのはアンタでしょ」

雑誌を閉じ横に置く。
その動作を目で追っていた彼の瞳は苦く歪められていた。

久しぶりに部屋を訪れると想像以上に彼の部屋が散らかっていたものだから、サッと片付けるつもりだった。
掃除機をかけていると頭を過ぎる考えにベタ過ぎるか、とひとり寂しくツッコミを入れ、ベッド下を覗き込めばそれは確かにそこにあって、驚きと同時に可笑しさが込み上げてきた。

これを使っていつも偉そうな梅樹を懲らしめられないものかと考えていたの。
とりあえず梅樹の嗜好がどんなものか把握するために本を捲っていれば、運悪く帰ってきた彼は私を見た途端、何も言わず正座をした。

「こんなのが好みだったのねぇ…私じゃ随分と物足りないでしょうに」
「さ、触るのと見るのとじゃちげーだろ!!!」
「何叫んでんの?」

未だ正座のまま必死に弁解している梅樹が馬鹿らしくて、それでもその口から発せられる内容に段々と顔が熱くなってきた。

「そもそもお前は感度」
「あー!!!ほんっとこの馬鹿!!!」

大きな胸を携えたオネエサンたちが載っている雑誌を顔に投げつける。
間抜けな声を上げたものの、ズルりと落ちた雑誌の下の顔は、おおよそファンの子たちには見せられないものだったと思う。

「…つーか、ベッドに座ってんだ。覚悟は出来てんだろうな」
「はぁもう勝手にして…」

軋んだベッドのスプリングと肩に置かれた手に容易く体は倒される。
その次…と、訪れない感触に体を起こすと梅樹が床に蹲っていた。

「…足痺れた」

情けない涙声に「アンタそれでも梨園の息子!?」と大笑いしてしまった私は悪くない。

後日「感度が良いのか」と松樹に真顔で問われ、堪えきれない羞恥を梅樹への平手打ちに込めた。


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