□十五夜さんのお月見はx白木
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「じゅーごやさんのおつきみはー。」



正面を向いて、何の前触れもなく手を縦に叩き始める。

一体なんのことやらと目を数回瞬きすると、不満げな表情。



「やってくれないのー?」

「……なにそれ。」

「手遊び。知らない?」



そういえば、手錠の鎖の長さがいつもより長い。



「知らない。」

「まあ、俺もここまでしか知らなーい。」



ごろんと膝の上に寝っ転がる。

なんだそれ、と口に出そうとしたが後が面倒なので口を結んだ。



「団子食べたい。白玉。」

「‘白木’だけに?」

「つまんなーい。三点。」



ジャラリ。

何もない部屋には鉄の音がよく響く。



「善財でもつくろうか?」

「手作りー?すごーい。」

「結構簡単だよ。今日はもう夜だから、明日材料買いにいこうか。」

「行くー。」



無邪気に足をばたつかせる白木。

目にかかる髪を払ってあげると、楽しそうに笑う。いつもの色のない笑みじゃなくて。


そんなに善財が好きなのか?そんな疑問を抱えつつ、月が照る夜空へ視線を移した。



「明日は満月だね。」

「ちょっと遅めの十五夜ー。」

「手遊び。明日こそ覚えてやろうか。」

「どうしようかなー。」



やり始めた本人のくせに。


でもこの言い方は覚えてきてくれる。

出会ってまだ少ししか経っていない時間の中でわかったこと。



「晴れるといいね。」

「もし雨が降っても、菊華は作ってくれるよね?善財。」

「当たり前。」



虫たちが共鳴する秋の夜。




―なんで善財には白玉なんだろー。団子じゃなくて餅でもいいのに。

―それ、お汁粉じゃない?

―あれー?そうだっけ。


fin


→あとがきに続く
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