小説

□間抜け日記
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薄暗がりの廊下。ほのかに聞こえる虫の声が、二階の足音や朝練の生徒の掛け声に掻き消される。いるのは掃除のおじさんと本当に少しの生徒。彼らも私と同じだろう。来る時間を間違えたのだ。
文化祭二日目。出し物自体は12時からだと知っていたのだが、出欠点検の時間を昨日と同じ9時だと勘違いした私は教室近くの机で足を投げたし不服そうな顔を浮かべていた。結局は自業自得なのだが、これから長い3時間が始まると考えると憂鬱で仕方なかった。
二年生の先輩が目の前を通りすぎる。声をかけようとするが出そうにない。「どうしたの?」などと尋ねられてしまえば、間抜けなのがばれてしまう。もう公認だが。とりあえず、プライドが許してくれなさそうなので会釈のみで済ませた。私に気付くことなく通りすぎる先輩。そりゃ、時間を間違えて、なにも仕事がないのに早く来てしまった間抜けがまさか自分の後輩だとは思わないだろう。
確かに駅の様子からしてまず、おかしかったのだ。同学年はもちろん、人も異様なほど少なかった。校舎を見れば自分の学年の階だけ真っ暗。そこまで私は気付くことがなかった。
12時からなら教会行けたのに。そんなことを考え、長椅子に倒れ込む。今日は日曜日だ。だから電車の時間も狂い放題だ。いつもの時間の電車はなかった。待ちぼうけに待ちぼうけを重ねる。さて、3時間をどう潰そうか。
たまたまその日は本という強い味方がいた。ゲームもあるのだが校内ですれば取り上げられることは間違いないだろう。
本を読み進める。突然携帯のバイブが鳴り響いた。
「何時に行く??」
「もう来てる。」
そんな間抜けな返信をすることになるとは思いもしなかった。もし他の人がこんな早い時間に来ていたのなら偉いと私は思うだろう。どんな理由であろうと。
早起きしたせいでとてつもなく眠い。早く寝ればよかった。そう思いつつ、本を読み終えたら寝ようと計画を立てる。しかしどう思うだろう。同じクラスの生徒が椅子で寝ていたら。間抜けと思うしかないだろう。二次元ならば起きると目の前には好きな人の顔が!!などという素敵イベントが起こるだろうが、ここは三次元。類友に起こされるか先生に心配されるかだ。
今望むのは素敵イベントではない。早く同い年の仲間がたくさん集まり、この椅子から脱却し、私の学年の階が光り輝くことだ。
そして教室の机で突っ伏して寝ることだ。
その日を待ちつつ私はまた、本を開いた。
 

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