FF短編(変換なし)

□7.嘘つきな最後
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電話で聞いた時間を間違えていた。
言い訳をするなら、先方が「14時」と「4時」を聞き間違えただけなのだけど。

でも電話を取って、対応したのは私なのだから私の責任。




でもたまたま先方がいい人で、




「それなら仕方ないですね」




と笑って許してくれたからよかったけど、職人さんはお怒りだった。
なんせ相手は神羅カンパニーのお偉いさん。
ウチみたいな小さな会社はこれを機に切られたっておかしくない。




電話越しにめちゃくちゃ説教されて、必ず時間を再確認するよう念を押された。
うちの会社は街の端っこのほうにあるので今から外に出るだけでも時間が掛かる。
出て直ぐに帰ってきてもらうのも心苦しいので、応接室で待ってもらうことになった。




「すみません、今急いで戻っているようなのですが後1時間ほど掛かるようでして・・・」




14時の約束と間違えて来てくれている神羅カンパニーのお偉いさんにコーヒーを出して、改めて謝罪すると全く怒っていない様でにっこりと優しい笑顔で答えてくれた。



「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」



気にしないでくださいね、と言って出したコーヒーカップを手に取った。
下手をすれば二時間は待たないといけないのに。
あの神羅カンパニーのお偉いさんなのに、この人は全然怒ってないどころか寧ろご機嫌だ。


大きい会社の偉い人なのだから分刻みスケジュールだと思っていたのに。





「ありがとうございます・・・」

「そうだ、待ってる間設備とか見せて頂けませんか?」

「え、あ。はい」





変な人。




そもそも何でこんな偉い人が、うちみたいな小さな会社にわざわざ来たのだろうと思っていた。


なんでもうちの会社が作る部品が凄くよい物らしくて、設備とか職人さんとかを見に来たらしい。
でもその職人さんが外に出ているから、設備だけでも先に見ておきたいのだそうだ。


私は事務員だから、機械の事とか、商品を作る工程だとかは聞かれてもあまり解らないのだけど。
そのことを伝えると、またもいい笑顔で



「構いませんよ」



やっぱり変な人。




解らないなりに工場を案内して、設備とか、機械を一緒に見て回った。
職人さんは外に出ているけど、見習いの人とかが居てくれたので、その人達と楽しそうに商品について話している。




「やっぱり現場はいいです」
「そうなんですか?」
「ええ」




何のことかよく解らないが、一緒に工場を回る。


自分の勤めている会社とはいえ、工場内の事はよく解らない。出来上がった商品の事はわかる。
でも、その工程だとか、機械とかは全く解らない。
回っている間、案内しているはずの私が、偉いさんから説明されて色々と教えられた。
とても丁寧で解りやすい説明で、時々飛び交っている名前に反応すると、またその名前の物について説明してくれる。




半分ぐらい回った所で、偉いさんの携帯が鳴った。
どうやら職人さんが帰ってきたようで、応接室に戻る事になった。





「この度はうちの者がご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!!」

「いえいえ、私が間違えただけなので。彼女を責めないでください。
それに工場を案内していただけて、有意義な時間が過ごせました。時間、間違えてよかったです」





案内した事はしたけど、一緒に歩いただけで。
寧ろ案内してもらった、と言うほうが正しい。
それなのにこの偉いさんは嫌味の一つもなく、いい笑顔でそう言うので謝りながらも怒っていた職人さんも怒りを納めていった。




その後は職人さんと偉いさんでまた工場へ行ったり、応接室で話したりしていたが、漸くして偉いさんが帰る時間になったようだ。

私も今日の事を謝ろうと偉いさんの傍にいくと、いい笑顔でお辞儀された。




「今日はありがとうございました、待ってる間も貴女のおかげで楽しかったです」

「そんな、今日は本当にすみませんでした」





またもいい笑顔で、謝らないで。と言って職人さんと挨拶をしている。




「統括、車回してきますので少々お待ちくださいね」

「ええ、ありがとうございます」




残された私と、偉いさんは特に話すこともなく、二人並んで立っている。
だって何を話せばいいのか解らないし。
でも何か話さないといけないのかな。と思って偉いさんを見ると向こうも何か思ってたようで丁度目があった。




「今日ね、」

「はい」





「実はわざと時間間違えて来たんです」






偉いさんはちょっと目を逸らしながら、先ほどからしていたいい笑顔ではなく、子供のような笑みを浮かべて早口に言った。
一瞬何を言っているかが理解できず、立ち尽くしていると職人さんが車を持ってきて、




「それでは」



そういい残して早歩きで歩いていった。
急なことで理解が追いつかず、その言葉を姿を黙って見送った。





「・・・・・・え?」






7.嘘つきな最後




お題提供:確かに恋だった

恋はナンセンス7題





拍手ありがとうございました!
7月に置いてました拍手お礼SSです。


統括はきっとなんかの時に知って、きっかけが欲しくて在り来りな時間の間違えをして構ってもらいに行ったんだと思います。

もちろん、相手方はあったことも無ければ、統括が統括だと認識がありません。

ミッドガルに住んでてもきっとそういう人っていると思うんですよね。
ニュースとかで見てるからプレジデントの顔はわかっても、その直近の人の顔は覚えられない、みたいな。


なんかストーカーみたいな(?)統括ですが、きっかけを作りたかった、みたいな話でした!


いつも拍手ありがとうございます!!
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