FF短編(変換なし)
□3.消えたキス
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「ちょっと、見える、トコに付けるなってアレほど言ったじゃない!!」
わなわなと震えるように怒っている。
と、小説の一文でよく見かける。
わなわなと震えるとは一体どんな風だろう、と思っていた。
身体を震わせて。
と言う風に漠然と思っていたが、ああ、こう言うことか。とぼんやり考えながらベッドから降りた。
「キワドイ服を着なければ見えませんよ」
目印を付けた場所は谷間の下の方。丁度下着の前中心あたりより少しだけ上。
谷間が見えるような服を着なければ普通に見えない。
覗き込むようにして見れば見えるのかもしれないが、そもそも人のモノのそんな場所を見ようとしてる輩がいるのならそれはそれで制裁もの。
「だから大丈夫ですよ」
そう言いながら怒っている彼女を後ろから抱きしめた。抱きしめた手を摘んでそこじゃない!と言って鎖骨の、どちらかと言えば肩の部分を指差す。
「こっち!」
そこだってきわどい服を着なければ見えないし、何の問題も無い。
どうせ仕事中はスーツも着ているし、服さえ着ていれば絶対に見えない。
よっぽど谷間の方が見えるし、逆にそんな場所、いつ見えるんだろうか。
「見えませんって」
怪訝な顔をして、腕の中から抜け出してベッド付近に落ちているキャミソールを拾い上げる。
そして素肌にそのまま羽織った。
「ほら!!見えるじゃん!!」
確かにキャミソールだけだと肩は向きだしだから紅い跡は見えてしまう。
谷間の方は見えない。
「そりゃそれだと見えますけど・・・」
何でわかんないの?と言わんばかりの顔をして、腕組をする。
キャミソール一枚で外に出るような気候でもないし、そもそも外で肩を出すような、派手な服を好んで着ているところは見たことが無い。
「はーっ、リーブ、明後日は何の日?」
明後日は何の日?
考えるが特に思いつかない。何かあっただろうか。
「えっと・・・?」
「もう!信じられない!!
明後日、部下の結婚式でしょ!!!」
言われて気付いた。
確かに明後日はうちの部の子が結婚するとかで、結婚式に呼ばれていた。
普段ならご祝儀だけだったりするのだけど、彼女も呼ばれているから虫除けに行こうと参加で返事をしていた。
いや、でも、確かそれは来月だったはず・・・。
「どうせ『それは来月だったでしょう?』とか思ってるんでしょ」
「・・・い、え・・・」
ギクリとした。
ばれている。
「信じらんない!・・・ほら!明後日だよ!」
鞄の中からスケジュール帳と、結婚式の招待状の葉書を取り出して見せてくれた。
確かに日付は明後日になっている。
近頃忙しくて日付の感覚が狂っていた。
「ぁ、あぁ・・・」
「もーーーーーー!!!」
結構な力で頬を左右に引っ張られる。というより抓られた。
「い、痛いです・・・」
「痛くしてるのよ!馬鹿!!!」
結構怒っている。
が、でももう付けてしまった物は仕方ないし、カバーできるように何とかするしかない。
「ごめんなさい、でも肩だったら何か羽織るとか、肩も隠れるようなドレスとか・・・」
「・・・あのねぇ」
スケジュール帳のカレンダーを指差して、明日のスケジュールを見せてくれる。
そうだ、明日は・・・
「このスケジュール感で、一体どうやって違う服揃えんの?」
明日は一日中視察でミッドガル中を一緒に周らなければいけない。
だからドレスを選びなおしてきていいと言える時間がほぼない。
なんなら昼食も移動中に取れるぐらいの時間しかないし、夜は夜で接待が入っている。
しかも今は真夜中。
今からどうにもできない。
「さぁ、どうするの?」
蛇に睨まれた蛙状態だ。
さっきまで幸せ気分いっぱいな時間を過ごして、ああ幸せだなー。と思っていたのに。1時間前の自分の行動を張り飛ばしたい。
「・・・何か、違うの持ってないんですか・・・」
「・・・はぁ、あのねぇ、男はスーツでそんなバリエーションも無いだろうからパーツ変える程度でもいいんだろうけど、女は同じドレス何回も着るわけにはいかないの!わかる!?」
とは言え数着ドレスを持っていればなんとかなるんじゃ・・・と言おうとして止めた。
「そう、季節によっても変わるし誰の式かによっても節度持った形とかにしなきゃでしょ!」
止めてよかった。
私が気付いたことに気付いたようで、クローゼットを開けていくつかドレスを出してくれる。
夏向きな薄い黄色のドレス
白いワンピースの形のドレス。
フォーマル寄りの濃紺ドレス
赤のスリットが入ったドレス・・・スカーレットよりはマシだったけど。
そして、明後日着る予定だったドレスはタートルネックで胸元はしっかりと隠れている代わりに肩はしっかりと出ていて。腰のところでふわりとマーメイドスカートな綺麗めドレス。
これならショールを羽織ったり、ボレロを羽織れば何とかなる、と思う・・・といいかけて止めた。
「はい、上着着ればいいでしょ。って思ったでしょ。残念。
このドレス水色でしょ、私の持ってるボレロはピンクだし、持ってるショールは編み編みとスケスケでーす」
取り出してボレロを羽織ってくれるが、水色に、薄いピンクの服装はかなりおかしい。
ショールも編み目が大きく普通に見えてしまう。
スケスケのショールは薄い黄緑色の生地で、一番組み合わせがマシかもしれないが、水色に黄緑も、ちょっとおかしい。
もう一つ出してくれたが、結婚式用じゃないのだろう。オフホワイトで綺麗なレースの物だったが、普通に見える。
「もー!どうしてくれるの!」
馬鹿!といいながら大きくため息をつかれた。
今の組み合わせを見る限りちょっと厳しい。
第二候補としてはフォーマルドレスだが、これは前の結婚式で着ていた記憶がある。
とは言え、スリットドレスは止めてほしい。多分これはかなり嫌々着ていた会社のパーティーか何かのドレスだった記憶。
「ごめんなさい、う、うまくファンデーションとかで隠せませんか・・・?」
「・・・隠せない事はないけど・・・」
キャミソール姿のまま、化粧品が入っている箱を持ってきて、いくつかリキッドを塗って、ファンデーションを叩いていく。
跡はしっかり見えなくなっていた。
「これなら大丈夫じゃないですか?」
ちょっとほっとして、肩に触れる。
眉をひそめて睨みつけられた。
「いい悪いの問題じゃないの!」
「す、すみませ・・・ん・・・」
また頬を抓られてデコピンされた。
「もう!ここだけファンデ塗ってはい終り、じゃないの!反対の肩と、腕の色も違うでしょ!」
また馬鹿!と言われた。
が、ちょっと落ち着いてきたのか怒っているには怒っているけど、そこまででもないように見えた。
「とりあえず見えないようでよかった・・・」
「・・・美味しいコース料理」
「はい・・・」
そのぐらいで機嫌が良くなってくれるなら。
ただ時間がお互い取れるのが何時になるのか、と言われると考えてしまう。
「そう言えばウチのテレビ、もう一個欲しいなー」
「何処に置くんですか?」
「ここ」
ここ、とは寝室。
寝室では殆ど寝る以外は何もしないのに。
しかし今何か反論するといけない。
「今度買いに行きましょう」
「どっか旅行」
「いくらでも」
これも時間の問題になってはくるが・・・。
「リーブ」
「はい」
にっこり笑ってニヤニヤしている。
こう言う表情の時は碌な事にならない。
「リーブは襟足結構あるよね」
「え、え・・・えぇ・・・」
確かに首に掛かるぐらいはある。
そろそろ切ろうと思っていたが。
「じゃあ、見えないよね?」
「は?」
大きく口を開けて首に顔を寄せられて反射的に肩を掴んで大きく離した。
「駄目ですよ!」
「どーしてぇ?いいでしょ?
『とりあえず見えなければいい』んでしょ?」
「いや絶対見えます!駄目です!」
「そんだけ襟足あったら見えないわよ!」
「ごめんなさい!本当に!反省してます!!」
何度か攻防を繰り返して、諦めてはくれた。
が、結婚式当日まで首あたりに視線を妙に感じた。
「あの、本当に止めてくださいね・・・」
「見えないから大丈夫よ?」
今度からキスマークは絶対に誰も見えないところにしよう。
どこなら大丈夫だろうか・・・。
3.消えたキス
お題提供:確かに恋だった
恋はナンセンス7題
夏の女性の服はきわどい物が多くて困ります。
脇見えてるのとか、谷間めっちゃ見えてるのとか、背中見えてるのとか。
太ももめっちゃ見えてたり、パンツ見えそうで・・・。
いえ、目のやり場に困るんです。
谷間にしかもう目が行かなかったりするんですよね。すいません。
いいおっぱいに弱いんです。
何の話やねん。
20.7月中に置いてた拍手御礼SSでした!